4話 課題か娯楽か ページ4
それから三十秒程葛藤を続けた末、どうやらこのやり取り自体が時間の無駄だと感じたらしい弟は、「先に下へ降りて待ってる」と言い残して私の部屋を後にした。
素直にそうしていればいいのに、と内心思いながら私素早く制服に着替える。
簡単に身なりを整え終えたところで、一階のリビングへと駆け降りた。既に朝食を食べ始めているのだろうと思ったが、何気に征十郎は私が来るまで待ってくれていたようだ。
弟の向かい側の席に座りながら、今更のように「そう言えば、お父さんは?」と尋ねる。
「父さんは、Aが起きる前にもう家を出て行ったよ」
「あ、そう」
父とは、顔を合わせても話すことは滅多にない。全く会話をしない訳ではないが、現状家族円満な生活を送っているのかと聞かれれば、正直素直に頷ける部分がないのもまた事実だった。
それにしても、皆揃って一体何時に起床しているのだろう。単純に私が遅いだけなのかもしれない。いや、その可能性が極めて高かった。
今日も、家を出る三十分前、つまり征十郎に起こされたのは七時頃だった。
「……あ、宿題やってない」
丁度茶碗を手に取った瞬間、何故かふと思い出した。そう言えば、昨日の夜に宿題をやろうと意気込んでいたのはよく覚えている。しかし、どうやらその後寝落ちしてしまったらしい。すっかり忘れていた。
「……俺は知らないからな」
少し間を空けて、しれっとした視線と共に弟からの同情の欠片も込もっていない言葉が突き刺さった。私は顔を上げて征十郎を見る。
「え、私まだ何も言ってないじゃん」
「言わなくても、Aが次に何を言おうとするかくらい大体わかる」
それよりさっさと食べて学校に行くぞ、と弟は言うと、早々に会話を切り上げてしまった。
私はおかずを頬張りながら、言い訳を述べるために口を開く。
「仕方ないじゃん。図書室で借りてた本の期限が今日までだったからさ、これは読むしかないと思って宿題やる前に読んだんだよ。そしたら思ったより時間掛かっちゃって。読み終わったらもう二時だし、眠いし、やる気失せるし、もういいやって思って寝たの」
「完全に自己責任じゃないか」
征十郎が呆れた視線をこちらに向けてきた。だが、そうしている間にも時間は刻々と進んでいくのであった。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2019年5月26日 20時