1:はじめまして。私が晋助様の許嫁です ページ1
「松陽!!竹刀持った女が門の外に立ってる!」
3人以外の塾生が帰ったあとに庭の木で寝ていた銀時がそう言いながら足早に家屋に戻ってくる。
「おや、誰でしょうね」
松陽はそう言うと銀時に連れられて門の方に向かう。
高杉は非常に嫌な予感がしていた。
変な汗が出てくる。これには思い当たる節がある。
「高杉。汗がすごいぞ」
「今日は暑いからな」
桂は今日は大して暑くないのに、と疑問に思うが黙る。
松陽が銀時とその竹刀を持つ女を連れてきたからだ。
「晋助。貴方にお客さんですよ」
やはり。ついに来てしまったらしい。
「晋助様!一体今の今まで何をしておられたんですかっ」
「わ、待て。竹刀を振り回すな!」
晋助を竹刀を振り回しながら走る女を桂や銀時も加わって止めに入る。
松陽はと言えばどこ吹く風だ。
女が止まる頃には4人とも微かにかすり傷を負っていた。
「いきなり尋ねてきた上皆様には御無礼を働きまして申し訳ございませんでした」
松陽が4人のことを手当てするとさっきとは打って変わって女は大人しくなり正座をして謝罪を始めた。
「こちらささやかですが、皆さんで召し上がってください」
女は自分の名を緋井Aと名乗った。彼女はその名に相応しい艶やかな緋色の着物を着ていた。
「晋助様とは幼馴染であり、許嫁です」
「「「は?」」」
頬を染めて言うAに普段は冷静な松陽でさえそう声を上げる。
「許嫁とは将来結婚を誓い合った仲であるということか」
「ええ、まぁ」
照れた顔でそう頷くAを見て松陽、銀時、桂の3人は揃って晋助の方を向いた。
「俺は勘当になったから、それももう関係ないだろ」
「何を言うのですか!私が晋助様をお慕いしていることには変わりはありません。明日から私もここに通います!というか住まわさせていただきます」
勢いのまま締めくくったAを見て4人は目を瞬かせる。
「あの、夫婦喧嘩に口を突っ込むのもアレなんだけどね。うち、そんなに金がないんだけど」
「いいんじゃないですか?」
「松陽?!」
松陽は驚き顔の男3人を放って穏やかな笑みのまま続ける。
「剣は得意ですか?」
「…多少は心得ていますが」
「晋助と戦って、勝てばここに置いてあげます。勿論親の承諾は貰ってきてくださいね」
70人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ