【一松】ほんとは大好き (ページ2)

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○再会ページ2

Aside

寿司屋の午前バイトの帰り。

昼の街を横目にぶらぶらしながら、左手に下げた袋を見てうれしくなる。

なんてったって今日はマグロの刺身をおすそ分けしてもらったからね。
………余り物のまかないだけど。

うちの寿司屋はよく魚の余りをわけてくれる。
一人暮らしの私にとってこの上嬉しいことはない。

さーてこの可愛い私のマグロちゃんをどう食べようかなー、なんて考えながら歩いていると。

足元にふわふわしたものが当たった。

なんだなんだと足元を見ると。

『お～、子猫だー！』

まだ小さくてトテトテ歩く子猫が、足にスリスリしている。
まるで “マグロちょうだい” と言ってるように見えて仕方ない。

(ちょっとぐらいあげても大丈夫だよね、猫って生魚大丈夫だよね……？)

思わずしゃがんで袋から元々小分けになっていたマグロを一切れ子猫に差し出す。

『ほ～～らお食べ！』

子猫も嬉しそうに「にゃ～ん」と鳴いたその時。

「おい。」

後ろで低い声がした。

いきなりの声に肩が跳ね上がり、『え、なんですか』と言わんばかりに声の主の方を振り向く。

「こいつ、まだ子猫って見たらわかるでしょ。子猫に生魚とか、あんた何考えて……」

うーわ、初対面でタメ口だよ。この紫パーカー。
ほんと常識r……んん？？

む、紫パーカー？？？

待てよ、この声……どっかで聞いたような……。

『！？一松くんじゃん！！』

私の大声に今度は向こう側が肩を揺らす。

「は、、え、お前、もしかして……A…さん？」

高校卒業以来、もう何年も会ってないものの、お互いどこか面影があったのだろう。
私が一松くんと呼べば、向こうもAさん…とぎこちなく呼び返してくれた。

『え～！一松くんー！久しぶり！』
「え、あ、うん……久しぶり……」

どこかよそよそしい一松くん。
だけど、その態度は拒絶しているものではなく、不器用ながらにこの状況を受け入れようとしている
感じだった。

____また一松くんに会えて嬉しい…！

素直にそう思った。
まだもっと話したかったけど、マグロの事を考えるとそうもいかない。

『じゃーね！一松くん！！』

「あ……うん…じゃあ」

__思いもよらない一松くんとの再会。

_______まあ、この再会が私の人生を華やかにする道の始まりなんて、
この時はまだ思いもしないよね。