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「あのさ、別に関わるなとかそんな意地悪いことは言わないけど、
ちゃっかりA指名するのとか、どうなわけ?」
「いや、どうなわけってなにが…?」
「Aに続いてお前も鈍感とかやめろよ。そーゆーのいいからさ。
なんでAの事指名したり、Aと朝から話してたりしたんだよって。」
僕がそうやって聞くと藤岡は「そりゃあ」と、Aの方を見やった。
「あの子友達が全然いなくて悲しいんだよ。中学も小学校もまともに通えてなかったらしいし、
いろいろみんなが普通だと思っていることが、あの子には欠如してる部分があるんだよ。
たしかにそれは頷ける。それでもあいつは素直だし、周りに馴染むのは時間の問題だと思う。
僕が共感して頷いていると、藤岡はまだペラペラと続けた。
「髪型だってそう。馨君の言うことにまんましたがったのは、友達っていう存在と、
服とか髪型とかでガールズトークとか全くしてこなかったからなんじゃない?
普通、がわからないからそういうのは指示待ちなんじゃない?って、
私はそんな彼女の感覚を養うために友達になろうって思ったんだよ。それだけじゃなくて、
いろいろ音楽とか演奏とかに対してあのこ、思うところがあるらしいから、
それについてもいろいろ相談に乗ってあげなきゃいけないとだし、
多分ショッピングモールとかもいったことないんじゃないのかなって思うから、
光君もAが好きなら、いろいろ支えてやってよ。
自分のイメージとか、友達作りに必要なこととかすっごい必死にいろんな情報かき集めてるけど、
ちょっとアホらしいから、あのこ。」
藤岡はAを狙ってるとかじゃなくて、Aの良き理解者だったらしい。
それに加えてAにとって、「初めての“女”友達」。
「ダメダメでダサダサなやつだと思ってたけど、Aのことすごいよく考えてんだね。」
「そりゃあどうも。じゃあソロソロ私にやきもち焼くのはやめてくれますかね」
「なっ、やきもち?そんなの焼いてないし」
「はいはい。本条さん呼んできなよ。」
人間って難しいんだな。英才教育とかいうやつで、音楽とか勉強とかのできるエリートでも、
友達が欲しいし、好きな人もできるし、可愛くなる努力をする。
でも、自分が与えられ続けたものはそれに応えるためのものじゃないから、
新しく誰かが何かを与えなければエリートだって、右も左も分からないアンポンタンなんだ。
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作者名:卣秦 | 作成日時:2019年10月23日 18時