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「こちら、女性用にウチの母が肩幅と袖の長さを調整した桜蘭高校男子制服のジャケットと、

同じくカッターシャツに、ネクタイと、膝にかかる程度の長さのスカート。

取り敢えず採寸とかはせずに、女性の平均的な肩幅とか背丈とかに沿わせて調整をしてまーす」


僕がそう言って制服を渡すと、「ありがとう、馨!」といって早速試着。

着替え終わった彼女は、カーテンの向こう側から嬉しそうに出てきた。


「どう?似合ってるかな?」


クルリと一回転して見せるA。いやぁ可愛いなぁ。

でも、ジャケットの袖が少し余ってる、それと裾。あと、ネクタイの結び方がぶきっちょ。

苦笑いしたくなるそのぶきっちょなネクタイを、光は解いて聞いた。


「ネクタイの結び方知ってる?」

「なんとなくは知ってるけど…。いざ結ぶとなったら結べなくて…」

「じゃ、光が結んであげるらしいから、結び方覚えてね。上着の袖とか裾とかが余ってるから、

また週末に調整して週の初めにAにこの制服あげる。それまでに覚えればいいよ。

「馨ー、勝手なこと言うなよ。まあ、結んであげるけどさ」

「ありがと。光」


光はそう言われて照れ臭そうにAのネクタイを結んでやった。

するとAが「二人はなんの食べ物が好き?」と聞いてきた。


「「僕らはイタリアンが好きだけど。それがどうしたの」」

「なんでもないよ。聞いておきたいなーってただそれだけ。気にしないでいいよ?」


なんだったんだろ。そう思っていたら殿に呼ばれた。


「常陸院ブラザース!そろそろ準備しろよ!」

「「はーい」」


僕らは返事して、殿達のところにいった。すると、Aはピアノの前にある椅子に腰掛けた。

Aは初めての部活だけど、Aは果たして上手くできるんだろうか。

第三音楽室の扉を開けて、いろんな女子生徒が入ってくると、彼女はそれと同時に

ドビュッシーのアラベスク第一番を弾き始めた。

奏でられるその曲は普段のホスト部とは違う感じの雰囲気を漂わせる上品な曲だった。

Aが弾くからそれは余計に。


「素晴らしいピアノの演奏ねぇ。誰が…、あら本条さんじゃない!

流石だわ〜、素敵ねぇ。バイオリンじゃなくてピアノもできるだなんて」

「本条Aはウチの部の雰囲気作りの演奏をしてくれる要員です。

忙しいらしくて中々部には出席ができませんが、

彼女の演奏と俺たちとの時間両方合わせてお楽しみください。」

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作者名:卣秦 | 作成日時:2019年10月23日 18時

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