０４奇妙な美少女 ページ4
朔間A
夢ノ咲学院普通科の１年生。
彼女は普通科の有名人だ。
「新入生に謎の美女がいる」
４月。
そんな噂が夢ノ咲普通科の生徒たちの間で広がった。
きっかけは入学式。
ある生徒のSNSに投稿された写真。
高校生になったことを報告するといったありふれた投稿のはずだった。
しかし後ろに小さく写りこんでいた女子生徒。
その女子生徒が美人すぎると在校生の間でひそかに拡散されていった。
授業開始日。
あの写真写りはたまたまなのではないか。
本当に美女なのか見定めてやろう。
そんな生徒たちが１年生のフロアに集まった。
そして彼女を見た生徒たちは息を呑んだ。
真っ黒な髪に深紅の瞳。
日光を知らないといっても良いほど白い肌。
椅子に座っているだけだというのにあふれ出る上品さ。
奇妙な美貌を持った女子生徒が存在した。
写真以上の美女だと、彼女を見た生徒は口を揃えて言ったという。
あまりの人の多さに教師が動くちょっとした事件になった。
入学から数カ月経った今でも彼女を見ようと教室に来る生徒は絶えない。
しかし誰も彼女に話しかけることはなかった。
女たらしで有名な先輩も彼女に恋する同級生も。
同じクラスの生徒でさえ彼女には最低限しか話しかけることはなかった。
故に彼女…朔間Aには友達がいなかった。
「夏休み前になっても友達が出来ない可哀そうなA。どうしてだろうねぇ」
「…あああもう！」
帰宅後。
兄である凛月が妹のAにそう問いかけた。
「本当にどうして！？２人には出来て私にはできないの！？」
リビングのソファに腰かけ、向かいで寝転んでいる兄を見つめる。
奇妙な美貌の持ち主やら人間離れしているやら散々言われているがそれは兄だって同じだ。
寧ろ兄たちの方が人間離れしている。
「帰りが遅いから友達と寄り道してると思ったのに」
「ただの体調不良で休憩してたんですー」
ふてくされながらそう答える。
放課後にプリクラを撮ったり食べに行ったり、
あの日思い描いた高校生活とは程遠いものになっている。
クラスメイトに嫌われているわけではない、はずだ。
昼ごはんを一緒に食べようと声をかけたことがあった。
返事はイエス。
一緒にクラスメイトと食べた。
移動教室一緒に行こうと誘ったこともあった。
返事はイエス。
何人かと一緒に歩いた。
しかし会話が弾むことはなかった。
みんな余所余所しいのだ。
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作者名：りんごあめ | 作成日時：2023年8月31日 1時
