検索窓
今日:33 hit、昨日:37 hit、合計:20,133 hit

330 取り戻すために ページ23

──タイムジャンプしてから流れた時間は、一時間と少しといったところだっただろう。

剣城兄弟の歴史は、本来あるべき形に修正された。

アルファ──プロトコルオメガからの妨害が入ったが、挑まれた試合に勝利を収めることができたのだ。


ここまで共に戦ってきた優一は、存在した歴史と共に消滅した。

京介にサッカーを返す。本来の自分の運命を受け入れ、乗り越えてみせる──そう言った優一の顔に曇りはなかった。

淡い金色の光に包まれながら、優一は最後に「ありがとう」と言って笑った。その笑顔は天馬の瞳に強く焼き付いた。


優一の姿が完全に消失した瞬間、信助と神童の頭には、サッカー部員としての京介の記憶が蘇っていた。どうして今まで忘れていたのだろう──そう思えるくらい、鮮烈に。

そんな二人の様子を見て、フェイが言った。


「これが歴史を修正するということだよ。今頃サッカー部には元の剣城京介がいるはずだ。
 ただ確認しに行くことはできない……僕らはこれからすぐにAさんの歴史も修正しないといけないからね。タイムリミットは間近に迫っている」

「A先輩に干渉してるエネルギーってやつの正体はわかったの?」


天馬がそう問うた。


「外からの干渉じゃなくて、本人の内部から生じたものだということまでは突き止められた。それを抑え込むか取り除くかする必要があると思う。
 行き当たりばったりで対処するのは危険だけど、実際にこの目で見てみないとなんとも。こんなのは初めてだ」


フェイやワンダバにもわからない不可解なエネルギー。対処法がわからないという事実に、天馬たちの顔が曇った。だが進まないことには何も解決しない。

「行こう」──そう言ったのは神童だった。

根拠はないが、今もAがどこかで助けを求めている気がする。神童はそう思ったが、口には出さなかった。


天馬たちはAの歴史の分岐点に飛んだ。





一同が降り立ったのは河川敷だった。


「ここは五年前の時空だね。Aさんがサッカーをするきっかけになった地点だ」


設備や空気感といった要素は、五年という歳月を経てもあまり変わらないものらしかった。天馬たちの目には、普段慣れ親しんだ河川敷そのものが映っている。


「あ、サッカーしてる!」


信助が示した先。フィールドでは数人の小学生がサッカーに興じている最中だった。

ただその一団の中にAの姿はない。

331 黒いエネルギー→←329 姉の願い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (42 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
173人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:キメラ | 作成日時:2022年11月2日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。