330 取り戻すために ページ23
──タイムジャンプしてから流れた時間は、一時間と少しといったところだっただろう。
剣城兄弟の歴史は、本来あるべき形に修正された。
アルファ──プロトコルオメガからの妨害が入ったが、挑まれた試合に勝利を収めることができたのだ。
ここまで共に戦ってきた優一は、存在した歴史と共に消滅した。
京介にサッカーを返す。本来の自分の運命を受け入れ、乗り越えてみせる──そう言った優一の顔に曇りはなかった。
淡い金色の光に包まれながら、優一は最後に「ありがとう」と言って笑った。その笑顔は天馬の瞳に強く焼き付いた。
優一の姿が完全に消失した瞬間、信助と神童の頭には、サッカー部員としての京介の記憶が蘇っていた。どうして今まで忘れていたのだろう──そう思えるくらい、鮮烈に。
そんな二人の様子を見て、フェイが言った。
「これが歴史を修正するということだよ。今頃サッカー部には元の剣城京介がいるはずだ。
ただ確認しに行くことはできない……僕らはこれからすぐにAさんの歴史も修正しないといけないからね。タイムリミットは間近に迫っている」
「A先輩に干渉してるエネルギーってやつの正体はわかったの?」
天馬がそう問うた。
「外からの干渉じゃなくて、本人の内部から生じたものだということまでは突き止められた。それを抑え込むか取り除くかする必要があると思う。
行き当たりばったりで対処するのは危険だけど、実際にこの目で見てみないとなんとも。こんなのは初めてだ」
フェイやワンダバにもわからない不可解なエネルギー。対処法がわからないという事実に、天馬たちの顔が曇った。だが進まないことには何も解決しない。
「行こう」──そう言ったのは神童だった。
根拠はないが、今もAがどこかで助けを求めている気がする。神童はそう思ったが、口には出さなかった。
天馬たちはAの歴史の分岐点に飛んだ。
*
一同が降り立ったのは河川敷だった。
「ここは五年前の時空だね。Aさんがサッカーをするきっかけになった地点だ」
設備や空気感といった要素は、五年という歳月を経てもあまり変わらないものらしかった。天馬たちの目には、普段慣れ親しんだ河川敷そのものが映っている。
「あ、サッカーしてる!」
信助が示した先。フィールドでは数人の小学生がサッカーに興じている最中だった。
ただその一団の中にAの姿はない。
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作者名:キメラ | 作成日時:2022年11月2日 10時