花宮夢2 ページ9
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息を吸い込んだ。
ふわりと漂った香りは、どこか危険で。
どこか、鋭くて悲しくて、甘かった。
「はな、み…や…?」
今、私の顔はきっと、赤い。
それこそ、少女漫画のように。
「嫌いだ」
囁くように言われた言葉は、冷たくて。
それは鋭く尖った切っ先で、私の心を切り裂いた。
それでも、私の頰から熱は引かない。
「俺は、お前が、大っ嫌いだ」
もう一度、私に言い聞かせるように。
低い声が私の鼓膜を震わせる。
「…私は、好き…だよ」
「ふはっ、お前の気持ちなんざ聞いてねぇんだよ」
さっきから、彼の言葉がひとつひとつ、私の心に突き刺さっていく。
ズキリと軋む胸は、確かに痛んでいるのに。
もう一つ、ドキドキと小刻みに跳ねて。
「嫌いだ、A」
グッと、手に力が入る。
それは、私がしてるんじゃなくて。
ねぇ、花宮。
私が嫌いなんでしょ?
「じゃあ、なんで__________」
「抱きしめてるの?」
私の声に、さらに力が入る花宮の手。
これ以上近づけないと思っていたのに、押し潰される勢いで。
「…好きだよ、花宮」
男にしては長めの黒髪が、サラサラと風に靡く。
花宮自身の香りが、私の鼻腔をくすぐる。
「…嫌い、だ」
苦しそうに吐かれた息が、首元にかかる。
花宮の背に、ゆっくりと手を添えた。
ビクリと震える彼は、きっと何かに怯えてる。
「花宮、好き…大好き」
圧迫感が増す。
私は、ゆっくり息を吐き出しながら顔を彼の制服に押し付ける。
「…嫌だよ、花宮も私の事好きじゃなきゃ」
「んなの、知らねぇ…よ」
じゃあ、歯切れが悪いのはなんでかな?
私を抱きしめてる手が震えてるのはなんでかな?
少し赤く見える頰は、私の気の所為?
「花宮、私の事…嫌いなら離してよ」
「嫌いだ、お前のことなんて…!」
言葉と裏腹な身体は、私を抱きしめて離さない。
…つまりは、そういう事でしょう?
「花宮、好き」
「__________嫌い、じゃ…ねぇ…A」
抱きしめて嫌いと囁いて
(“嫌い”はきっと彼なりの、“好き”)
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ユズナ(プロフ) - 今吉いぃぃぃぃぃぃいえあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!(((( とりあえず、いまよしぬ レベルですよこれ…禿げそう(( (2015年11月8日 8時) (レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
鹿野悠(プロフ) - 甘夏蜜柑さん» ありがとうございました!ブン太待ってます! (2015年7月12日 14時) (レス) id: 0a529b702d (このIDを非表示/違反報告)
甘夏蜜柑(プロフ) - 朔夜さん» 了解です!もう少し時間がかかってしまうかもしれませんので気長にお待ちください! (2015年7月12日 10時) (レス) id: b96b0fe977 (このIDを非表示/違反報告)
甘夏蜜柑(プロフ) - 涼風さん» 続編に行ったら書かせていただきます!一応赤司のは書いたのですが、僕司夢っぽくもなっているので別の物を書いて載せたいと思っています。 (2015年7月12日 10時) (レス) id: b96b0fe977 (このIDを非表示/違反報告)
甘夏蜜柑(プロフ) - 鹿野悠さん» 雲雀さんと仁王書かせていただきました!丸井くんはもう少しお待ちください! (2015年7月12日 10時) (レス) id: b96b0fe977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2015年5月28日 15時