【黒バス】R【黒子テツヤ】

「思考回路一直線」＊ ページ38

急に何にウケたんだ、と困惑していれば、社長は急に静かになって、かと思えば絵本でも読むような声色で昔話をし始めた。

藍里とか関係なくこの事務所はやめとけば良かったかもしれない、と心から思いつつも、俺は一応愛想だけは保っとこうとその話を聞く姿勢は崩さなかった。


で。

社長の理事長ばりに長〜い話をまとめると、まぁ、藍里Aはめちゃくちゃ凄い、って話で。

今では渋谷のど真ん中に本社を構える一大事務所だが、もともとスターチスは所属芸能人が数人しかいないかなり小さな事務所だったらしい。

んで、それをここまで大きくしたのは藍里A……らしい。


彼女が入社したのは5年前。

小学生時代はパッとしなかったらしいけど、中学に上がってからの勢いは凄まじかった。


彼女は特に雑誌の専属モデルをしている訳でもなく、サロンモデルとして様々な美容院の広告に載っていたのがSNS上で拡散され、瞬く間に大人気。


雑誌や事務所の力を借りずに自己プロデュース力やSNSの運用だけで人気を勝ち取った彼女は、モデルとしてかなりイレギュラーな存在だって事くらい俺でもわかる。


サロンモデルなんて一口に言っても色々だし、サロモ経験があっても事務所に入ってない人だってたくさんいて、言ってしまえばほとんど素人みたいなもんだ。


それでも藍里Aは、今じゃ人気ティーン誌のモデルたちと肩を並べて四天王と呼ばれる程の爆発的な支持を受けている。


彼女が紹介した商品はすぐさま完売、何かしらプロデュースすれば全部大当たり。


社長は話の途中、彼女は自分を商品化することに対してなんの躊躇も無く、商品化した自分を売り出すのが上手い、としきりに言っていた。


俺は馬鹿だから正直社長が何を言ってんのかよく分かんなかったけど、それでも社長の藍里Aに対するリスペクトと、藍里Aのプロ意識みたいなものだけは感じ取れた、気がした。


張合いのない毎日に退屈してた俺は、同い年なのに確固たる「結果」を残している彼女と、彼女を取り巻くプロの現場というものに、何となく憧れてしまった。

……単純じゃなくて素直と言って欲しい。


話を聞き終えた時にはこの事務所を選んで良かったと思ってたし、何なら運命じゃないかとすら思った。



その後の社長の「だからAはお前の首何時でも吹き飛ばせる権限持ってるんだからな」という言葉に、上がっていた体温を一気に下げられたのをよく覚えてる。

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