笑顔で満たして。【椎名ニキ】

20話 ページ21

ニキside

練習時間になってもこはくちゃんが来ない。僕が若干遅れたせいもあるけど、こはくちゃんは時間に関しては割と厳しい方。……だと思う。
燐音くんから「探してこい」と言われ、行きそうな場所は全て当たった。
だけど、見つからない。うーん、どうしたんすかねえ。

受付の人に聞こうと、1階に降りるとこはくちゃんを見つけた。
声を掛けようとしたが、＿＿＿それは叶わなかった。


楽しそうに談笑する、Aがいたから。


何で……あの、2人が？
思い返しても、全然接点はない。それどころか2人が話した記憶すらない。
まさか、僕の知らないところで……？

そう思うと、ふつふつとどす黒い感情が湧き上がってきた。


僕の方が前から好きだったのに。
僕の方が知ってるのに。


前からずっと想ってる。何に関しても1番だって、……ずっとそう想ってた。
でも違った。何年も会ってないんだ。そりゃあ1番じゃなくなるに決まっている。


出しかけた手を握りしめ、降ろす。
僕はその場に立ち尽くすことしか出来なかった。

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