笑顔で満たして。【椎名ニキ】

19話 ページ20

『ごめんなさい。急に来てしまって……』
「コッコッコ。ええよ、全然」


見ると練習着を着ている。もうすぐ練習なのだろうか。
じーっと見ていると、首を傾げながら桜河さんが口を開く。


「何や、そんなに見て。穴が開きそうやわ」
『えっ、や、違くて………その』
「冗談や。で、何の用なん？」


そうだ、本来の目的を忘れるところだった。私はリュックからひとつの手紙を差し出し、桜河さんに手渡した。


『実は、昨日のCrazy:Bのライブを見に行ったんです。ニキがチケットをくれたっていうのもありますけど……元々興味があったので』
「え、来てくれたん？嬉しいわ！……でも、何で手紙？」


私は伝えた。ニキに番号を渡されたが勇気が出ず掛けられなかったこと。ライブに来たら感想を伝えてほしいと言われたこと。そしてその感想を綴った手紙を書いたから、桜河さんからニキに渡してほしいこと。


「へえ、そういう事情なんか。……分かった。渡しとくな」
『ありがとうございます』


深く頭を下げ、『それじゃあ』と桜河さんに背を向けビルを出た。





「…………A？」

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