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試合当日。尾刈斗中の監督は豪炎寺以外を敵とすら見ていないようで、染岡は苛立ちを見せていた。挨拶にすらならない会話が終わり、試合が開始される。

『円堂は“ゴッドハンド”を問題なく発動し、染岡くんの“ドラゴンクラッシュ”で流れをこちら側に引き寄せた。

……2点も先制するなんて。ハットトリック達成も夢じゃないな、染岡くん。』

大神はベンチから試合を見つめ、状況を観察する。全員が勝利を確信し、自信がついたようだった。

『しかし、例の映像で観た現象は未だ起きていない……油断してはいけないよ、皆。』

大神が心配した矢先、尾刈斗中監督の様子が変わって口調が激しくなる。呪文を唱えるように、同じ言葉を繰り返す。

直後、雷門イレブンは仲間内でマークをし合っていた。尾刈斗中キャプテン───幽谷博之が手を前にかざすと、全員の動きが止まる。

「───“ゴーストロック”!!」

雷門イレブンが動けないフィールドで、尾刈斗中はついに逆転した。

前半が終了するホイッスル。部室に集まった雷門イレブンは状況が理解出来ず、顔を顰めていた。

「そう言えば、あの監督が呪文を呟き始めてからだよな。尾刈斗中が変な動きをしだしたのって……」

「じゃあ、あの呪文に秘密が?」

「答えは試合中に見つけるしかないな。兎に角、ボールを取ったらすぐFWに回して、シュートチャンス増やすんだ。」

まだ1点差であると円堂が皆を励まし、FWの染岡と豪炎寺に呼び掛けた。染岡は応えるも、豪炎寺は何かを考えているようで返事は無い。

その時、黙って話を聞いていた大神が口を開いた。

『……ごめんね、皆。出しゃばったことを言うかもしれないけれど、後半は僕もフィールドに立たせてもらえないかな。』

「え?」

『ポジショニングはどこでも構わない。ベンチからの客観的な景色と、試合中のフィールドからの景色……確かめたいことがあるんだ。

勿論、皆が拒否すれば僕はベンチからの視点で解決策をみつけよう。』

大神の積極的な発言に、その場の皆は顔を見合せる。暫くして、壁山が名乗りを上げた。

───後半が始まる。

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作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年2月19日 3時

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