【黒子のバスケ】未来へのキセキ XⅠ (ページ29)

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第529Q 出すことと、出させられることページ29

「これは…(正直バカにしていたが力ならアツシと張るんじゃないか…！？)」

先ほどの力づくのダンクには氷室も顔をしかめた。

「大丈夫か木吉！？」

「あぁ…！」

木吉の様子を見た伊月は掛けかけた言葉を止めた。

「(なんて汗…！やはりあの力は…ゴール下は恐らく押し競饅頭みたいなもん…体力消耗も深刻だ…！！)」

現在、PGとして試合を俯瞰から見ていたAは攻めあぐねていた。

「(どう攻めよう…先輩たちは今部が悪い…
できるだけ体力温存させたいけどここは大我か……)」

「Aくれっ！！」

そんな瞬間、耳に届いたのは木吉の声であった。

「おうおうまだまだやる気じゃねぇか！木吉」

まだまだ気持ちは萎えてないが、その様子を見守るリコの表情は不穏であった。

「ぐっ…(負けるか…)」

ダンクからの力勝負を狙った木吉だが、咄嗟に背後にいた火神へのパス。

これは反射的な逃避。
パスを出すのとパスを出させられるのとは意味が全く違う。

今のは確実に後者であった。

まだ本人たちは気づいていないが今のは日向と同じ。
相手を前に下がってしまっているのだ。

だが、木吉の判断は間違ってはいない。
しかし、スコアボードは15点差まで開いていたのだった。

誠凛は間違ったプレイはしていない。それでも着々と差は開く。つまりここで現れたのは力の差。

「そういや青峰、お前赤司に1年がついたときライオンとチワワに例えとったな。」

この展開に口を開いたのは今吉であった。

「随分優しく例えたと思うで。ワシに言わせたらライオンと小蝿や。ライオンはたかる小蝿をわざわざ払ったりせん。赤司が特別何もしないのもそれと一緒や。
伊月が黛を抑えてるから効果ゼロとは言わんが…それが封じてるとはちゃうしな。」

次の瞬間、黛からのパスが葉山へ通る。

「(しまった…他に気を取られて…
鷲の目の死角に入られた…！)」

「姿を消すのがオレの仕事だが、忘れられちゃ困るな。」

このパスをきっかけに点差は17点差へ。

誠凛は誰が見てもいいチームだ、
しかし今のままではただのいいチームでしか無い。