湖の村 ページ45
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補助監督の車に揺られて約3時間半。
ナナミンは助手席に、俺は後部座席に座っていたので特に会話が弾む事も無く、流行りのJpopを聴きながら時間を過ごした。
今日の任務は何やら土地神の絡む2級の案件らしいのだが、何故かナナミンが付く事になったそうだ。
車の中でガチャガチャ銃や暗器の確認をしていると車がゆるりと止まり、バカンと扉を開け放った。
「んんん〜〜〜っ」
「3時間半車詰めと言うのもなかなか堪えるものですね…」
「あはは……にしても、綺麗な所だな〜」
「そうですね。神が住まう場所だと思う人の気持ちも分かります」
ここはある盆地。古風な集落にはそれなりに人が住んでいるようで、こんな場所の割にスーパーみたいな建物もあるみたいだ。
自然が思うままに枝葉を伸ばし、美しい空気が満ちている。
そして何より凄いのが、
「湖ってこんな綺麗な所もあるんだ」
凪いだ水面は鏡のように空を映し、縁には山の緑が映り込んでいる。
凪いだ水面を見ていると歩けるような気がしてきて実際足を踏み入れる人もいると言うが、納得してしまう。
今回調べに来たのは、この湖についてだ。
上記の通りにこの湖へ足を踏み入れ、当然歩くことなど出来ないので瞬く間に沈んでいってしまう。
そういう人達が余りにも多いのだと言う。
しかもその人達は決まって地面に水死体となって見つかるらしい。
「セイレーンみたいなこと、なのかな」
「先ずは話を聞きに行きましょう。村長の家へ話を通して貰っています」
「ありがと七海さん!」
澄んだ空気に心を浄化されながら笑えばナナミンは律儀にどういたしましてと返して歩き始め、慌ててその背中を追いかけた。
*
____結果を言えば、まぁ色々と分かった。
窓による報告を少し詳しくした程度のものだけれど、大体はどんな呪霊の仕業なのか分かった。
やはり似たもので言えばセイレーン。
鏡のように凪いだ水面は人間に歩けるのではという錯覚さえ起こさせ、それに誘われて行ってしまうのは子供が多い。
そして遺体が決まって陸に上がっているのは恐らく、『湖を汚してはならない』という村の人々の信仰が産んだものだ。
湖に汚れ__遺体を沈んだままにはしないのだろう。
「はぁ……傲慢な呪霊もいたもんだな」
「湖へ向かいましょう」
「はい」
人間様を弄びやがってと内心毒づきながら、美しい湖へと足を進めた。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時