寸前 ページ46
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その美しい湖まで戻った時、目の前に見えた光景に思わず手が伸びていた。
「ちょ____っと待て!」
「うわぁっ!?」
少年が乗り上げていたフェンスがガシャンと音を立て、落ちてくる体を抱き留める。
地面に下ろしてそのまま怒鳴りつけた。
「何してんの!?危ないだろ!」
「え…え……?ぼ、僕っ…」
「取り敢えず大丈夫か?怪我は?」
「だっ、だいじょ、ぶ…だけど、」
ソワソワと不安げに視線を彷徨わせる少年の肩に手を置き、目を合わせて話し掛ける。
「俺はA。オマエは?」
「ひ、
「オッケー聖、ちょっと向こう行って話そう」
「う…うん」
湖をチラリと見遣る聖の肩に手を回し、早く行こうとナナミンに声を掛けて3人並んで歩き出した。
*
結局は俺が聖に聞き込み、ナナミンは引き続き調査という事になり、俺と聖は缶ジュースを片手にベンチへ座った。
改めて自己紹介をした方が良いだろうという事で、聖が改めて口を開く。
「天羽 聖、です。そこの私立中に通ってます。2年です」
「俺は一色A。呪術高専の1年。今日は此処の神様と都市伝説について調べに来たんだ」
そう言うと聖は長い睫毛が影を落とす瞳を見開いて身を乗り出してきた。
「じゅ、じゅつ…?呪詛とかの?」
「ああ。呪術高等専門学校っていう、呪い…化け物と戦う術を身に付ける為の学校なんだ」
「へぇ…!っねえ、それって僕でも入れる?」
その言葉に、今度は俺が目を見開く番だった。
切実な視線を受けてキョトンとしながらもこちらから質問を重ねる。
「もしかして見えてる?それが人を殺してるんだって、知ってる?」
その質問に聖は背を丸めて両手の中の缶ジュースへ視線を落としながら答えた。
「見えるよ。そのせいで僕、この村の人達からは変な奴だと思われてるみたいで…友達はいないんだ」
「……成る程ね。ごめん、俺はただの1生徒だからちょっと何とも言えないんだけど…俺の先生最強だから、聞いてみるよ」
「さ、最強?」
何言ってんのと言いたげな視線にニヤリと笑みを返して応え、さて本題に入ろうと聖に向き直った。
「この村…というか湖にさ、都市伝説とか無い?」
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時