都市伝説 ページ47
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都市伝説について詳しく聞かせて欲しいと頼めば、聖は素直に全てを話してくれた。
『御鏡様 御鏡様 汚れを祓い身を映し どうぞ私を運んで下さい』
そう唱えてジッと水面を見つめる。
すると次第に誰かの声が聞こえて来て、呼ばれた方向__湖の中心へ歩いて行くと本当に湖の上を歩ける。
そしてそれは複数人でも可能。
らしい。
なんだそれと思いつつ、それによって被害が出ているのは事実だから無下にも出来ないし。
……え、ちょっと待って。てゆーか、
「聖、お前じゃあ…さっきの呪文を唱えたってこと?」
ハッとして問えば、聖は決まりが悪そうに俯いて組んだ手を遊ばせる。
何でそんな事をと問う前に、きっぱりとした声が返って来た。
「だって僕なんて居ても居なくても同じなんだよ。…僕、両親が亡くなってから親戚の間をたらい回しで……今だって疎まれながら生活してるんだ。穀潰し、って」
「穀潰し…?子供に何言ってんだソイツ」
「でも実際そうだよ。もう来年度いっぱいで義務教育も終わる。そしたら高校に行けるかすら怪しい」
腹立たしげに、悔しそうに言葉を紡ぐ様子を見て、少し____安心する。
まだこの子は絶望してない。
「あの人達は、僕が邪魔。僕は別に生きてやりたい事もない。なら…神様に食べられちゃった方が幸せかと思って。眠るように死ねるらしいよ」
「なるほどねぇ…」
神様、なんて嘲るような調子で言う聖から澄んだ空へと視線を上げて、いつかの幸せな日々を夢想する。
『お父さん、お母さん。僕、大きくなったらお医者さんになって要を治してあげたい』
『ははっ、素敵な夢だね。お父さんは応援するよ』
『Aくんはお勉強、ちゃんと頑張れるのかな?』
『うん!僕、勉強って好きだ』
あの頃に戻れたら、きっと…
_____さん
__一色さん
「一色さんっ!」
「おわっ、ごめん聖。…ってお前、凄い汗じゃん。どうした?」
俺を幸せな夢から現実へ引き戻した聖は俺の服を強く掴んだままダラダラと脂汗を浮かべて震えていて。
恐怖に見開かれた瞳が小刻みに揺れる様子は余りにも異常だ。
どうした、何かあったかと何度も問いながら肩を掴んで揺らせば、カサカサに乾いた唇が震えた。
「よ、よばれっ…呼ばれてる……!」
「は…?」
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時