Voix de l'ange 10 ページ15
なんだか最近、演技をしているとき以外でぼーっとしていることが多くなった気がする。まぁ、それで心配してくれるような友人なんていないのだけれど。友人という言葉でちらつくのはいつだって同じ顔だ。
ここは確か逆先くんと初めて出会った場所。かつての練習場所。例えば彼に何かを話すとしたらどうだろう。自分は何を話すのだろう。
自分の過去?誰も知らない私の醜い苦しみ?
それじゃあ聞いている逆先くんがあまりに酷だろう。でも、過去を話す以外で、笑えないという事実を説明する手段などあるだろうか。
「どうしようかなぁ……」
「何ガ?」
少し、驚いた。
本当に出会った時の状況みたい。私は台本を読んでいないけれど、逆先くんがひょっこりと顔を出してこちらを窺っている様子なんかは本当にそっくり。
昨日見たあの光景を頭から追い出して、私は適当な言葉で取り繕う。
「いや、君に何かを話したかったことがあるとんだけど忘れちゃったなぁ、って」
「嘘。そんな顔じゃなかったヨ。何か話題はあったけど、話したくはない、って感じかナ?」
彼には人の思っていることを読み取る能力でも備わっているのだろうか。いや、私のない表情を正確に読み取る能力……?まあ、そんなことはどうでもいいのだけれど。
「……よく分かったね。でも、もう少し待っててもらえるかな。やっぱり、話すのは怖いんだ。それを認めてしまうようで、自分がこれから前を向いてしまうような気がして」
忘れたくないし、まだ、前に進む気にもなれない。だからこそ、私は誰にも自分のことを話さずに抱え込んできたんだ。
逆先くんはぼそぼそと話す私のことを何も言わずに見ていた。その琥珀の奥は相変わらずわからないし、私もきっと彼のことを見ようとしていない。
ずっと守ってきた自分を壊されたくない。殻に閉じ込めていた感情を暴かれるのが、嫌なのだ。
「ごめんね。多分それは暗い話だから。苦しかった時の記憶。本当なら誰かに聞かせるようなものじゃない。でも、君が私の笑顔を見たいと言ったから、私もそれに応えなきゃいけない」
考えることもなく、単語を並べていく。あれ、でもこれはまずいのではないか?まだ、そのことを言うべきではない気もするのに。
「私ね、嬉しいとか楽しいとか、そういう感情が分からないんだ。いや、それ以外の感情も人よりかは薄いんだと思う。だから、本当の笑顔なんてものはきっともう……」
ああ、言ってしまった。
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草谷 玲(プロフ) - Hana@美月姫さん» コメントありがとうございます!!長い間更新してないと話の内容を忘れてしまってちょっと放置していたのを後悔してます…w 更新遅くてごめんなさい。頑張ります!! (2017年3月11日 1時) (レス) id: 36db035794 (このIDを非表示/違反報告)
Hana@美月姫(プロフ) - テストお疲れ様です! 作者様のペースでこれからも更新頑張ってください♪ (2017年3月10日 23時) (レス) id: 6ef80e5a16 (このIDを非表示/違反報告)
草谷 玲(プロフ) - カエデさん» コメントありがとうございます。そう仰っていただけて嬉しいです。こっそりフォントも変えて、打てる文字も多くなったので、推敲はしようと考えています。主人公のしあわせを願っているので、なんとか自分の思い描いた終わりに持っていければな、と。 (2016年12月29日 21時) (レス) id: 36db035794 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - 私は作者様自身が作品に愛着が持てるような作品を作っていただきたいので、推敲したいと作者様が考えるなら推敲するのに賛成です。待ってます^^ (2016年12月29日 20時) (レス) id: cc1036df59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:草谷 玲 | 作成日時:2016年11月25日 23時