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「う、うん…頑張る!」 ページ24

「ほら大丈夫。その取っ手は熱くないでしょ?ほら、ゆっくり」
「う、うんん...」

ぷるぷる、と重いコーヒーポットを持つ手が震える。
確かに取っ手は熱くないが、本体は熱いのでじわりじわりとまるで逃げ道を奪われているような、浸食されるような、そんな風に熱を感じてしまって逆に怖い。

「入れすぎちゃわないで!お湯はちょっとずつ。ほら、よく言うでしょ。いきなり入れたらお豆がびっくりしちゃうって。」

そんなこと考える余裕もない。
むしろポットを落とさないかで必死なのに、お豆さんたちへの配慮なんて出来る余裕が残っているわけがないでしょう。
ぽちょ、と奇妙な音を立ててちょびちょびお湯がコーヒーフィルターに入ったコーヒーを湿らしていく。

「うわっ!」

ぷくりと膨れ始めたコーヒーに驚き、思わずばちゃりとお湯をかけてしまう。
それでさらに膨れたコーヒーに、何とか自我を持ちお湯を零さないように踏ん張るが、驚くものは驚く。

「そう、そんな感じで豆が膨らむの。今日は初めてだからいいけど、今度から入れるときは、蒸らしもやってみようか。」
「蒸らし…?」
「ちょっとお湯を全体に含ませて、大体10から20秒くらい待つの。」
「へぇ…」

今回はそのまま淹れちゃおう、ということでリナリーちゃんのアドバイスを受けて、
いまだに重いポットを傾けてお湯を排出する。
もわりとたつ湯気が怖くてどうしようかと思った。

「円を描くようにして淹れて」

隣で可愛らしい声を聴きながら、少しずつ軽くなっていくポットを回し、水で螺旋を描いた。
じわりと薄茶から濃い茶色に変わっていくコーヒー豆が面白い。

こぽこぽと音を立てて、コーヒーの心地いい香りあたりに広まる。
ただでさえコーヒーは普段から香り高くいい匂いをこれでもかというほど放出するのに、その匂いの元が目の前にあり、私がその匂いを出している発信源だ。
なんとなく、コーヒーを淹れるのが楽しくなってきた。

「楽しいでしょ?」
「え?」
「Aちゃん、ちょっと笑ってるよ。」
「嘘…」

気付かないうちに微笑んでいたことに気付く。
熱がこんな近くに、触れるか触れないかの位置にあるのに、いまだに恐怖心は消えてないのに。
こんな当たり前で、誰もがやる動作を、楽しいと思っているんだ。

「慣れるまでは私と一緒に入れよ?私が任務いったりするときは、みんなのお世話をお願いね。」
「う、うん…頑張る!」

とりあえず、イノセンスが戻るまで仕事に困ることはなさそうです。

「退院、したぁああー!」→←「本当に、熱には…触れられなくて、」



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作品ジャンル:アニメ
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∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - ログ@エネさん» ちょっw興奮しすぎじゃき( 読んでくれてありがとう!少しずつ二人の仲を近づけていきたい!…です( (2014年5月17日 19時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
ログ@エネ(プロフ) - おおおおお?ついに?ついに?ラビへの思いに気づくか? (2014年5月17日 0時) (レス) id: 4873300096 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - 夏みかんさん» そんな嬉しいこと言わないでください…マジで感激で泣いちゃいますよ>< 本当にありがとうございます!いつも閲覧頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。これからもどうかよろしくお願いします! (2014年5月12日 17時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
夏みかん - 素晴らしいです。あぁ、めっちゃ好きです!更新頑張って下さい。 (2014年5月12日 15時) (レス) id: 6748ba7e6c (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - 羽さん» 楽しませることができて光栄です!更新、頑張らせていただきますね^^ (2014年5月3日 23時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年1月12日 15時

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