「泣き疲れたみてぇさ。」 ページ18
「…寝たのか?」
「…ん。泣き疲れたみてぇさ。」
真っ白い病室で、ひそひそと二人の男の声が交わされる。
その二人の間には、泣きつかれてすぅすぅと寝息を立てている少女の姿があった。
その姿はまだ幼さを伴っていて、成人すらしていないことがよくわかった。
いまだに頬には涙の痕が残っていて、それをラビと呼ばれる赤毛の青年が指で拭う。
クロウリーは、その姿を見て目を伏せる。
「いろいろと、貯め込んでいたのだな。」
「…あぁ。迷惑かけちゃだめだって気張ってたんだろ、ずっと。」
二人の声は驚くほど静寂で、冷静だった。
だが、二人とも労りを表すように、視線の先はAから離れずにいた。
「ここにいる間ずっとこの小娘と話していたが、話すよりは聞き上手だったな。すんなりとエリアーデのことさえ話せた。」
「…多分こいつは、自分のことはあまりさらけ出さないタイプなんさ。」
同じような人を知っているのか、ラビが少し目を細める。
その目は、心ここにあらずという感じだった。
「…私に自分のことを話すのが、私にとって迷惑だと思っているのか?」
少し驚きを含んだ口調で、クロウリーが顔をあげてラビを見据える。
ラビも、ようやくAから視線を外してクロウリーを見た。…が、すぐに目を逸らす。
「うざがられたくないんさ、多分。」
ラビが言った言葉は、クロウリーには到底理解できずにいた。
首を傾げながら、クロウリーはラビに先を促す。
ラビも、クロウリーが理解できないのは百も承知というように説明し始める。
「聞いてもいないのにいきなり自分の過去だの話し始めたら、嫌な気持ちになるか?」
「…普通はならないが…。」
「それは俺らが仲間だからだ。じゃあろくに知りもしない人が話し始めたら?」
「…それは、少し抵抗があるな。」
そういうことさ、とラビは口を閉じた。
暫く病室に沈黙が響いた。
だがすぐにその沈黙は、クロウリーによって破られる。
少しの動揺が見受けられる、そんな声だった。
「…この小娘は、私たちが仲間ではないと思っているというのか。」
「仲間より一ランク上の存在さね。」
「…?」
再び首を傾げるクロウリーに、ようやくラビの口元に笑みが浮かぶ。
四六時中笑っているようなこの男には、やはり笑みが似合うな、とクロウリーは素直に思った。
「尊敬しすぎて、自分と同列にするにはおこがましいって思ってるくらいじゃねぇか?」
「…。」
馬鹿だ、というクロウリーの言葉が病室に響いた。
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∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - ログ@エネさん» ちょっw興奮しすぎじゃき( 読んでくれてありがとう!少しずつ二人の仲を近づけていきたい!…です( (2014年5月17日 19時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
ログ@エネ(プロフ) - おおおおお?ついに?ついに?ラビへの思いに気づくか? (2014年5月17日 0時) (レス) id: 4873300096 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - 夏みかんさん» そんな嬉しいこと言わないでください…マジで感激で泣いちゃいますよ>< 本当にありがとうございます!いつも閲覧頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。これからもどうかよろしくお願いします! (2014年5月12日 17時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
夏みかん - 素晴らしいです。あぁ、めっちゃ好きです!更新頑張って下さい。 (2014年5月12日 15時) (レス) id: 6748ba7e6c (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - 羽さん» 楽しませることができて光栄です!更新、頑張らせていただきますね^^ (2014年5月3日 23時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年1月12日 15時