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ライブは盛況、終始その歓声は止むことは無かった。いつもより大きな舞台を駆け回り、七人で大勢の人を楽しませられたと思う。
凛月くんはジャック、鳴上先輩はクイーン、朱桜先輩はキングをそれぞれ模した衣装で、やはり場数を踏んでいるだけあってまるで元々のモチーフであったかのように違う己を操っていた。
合同だというのに、そんな彼らに負けじと挑んだおれ達。けど、やっぱり『Knights』から教えてもらったとはいえ付け焼き刃の"騎士"では少し足りなかったかも、なんて後から思う。
それでもおれ達は楽しかった。楽しくて楽しくて終わってからもその動悸は治まらなくて。アイドルになれて良かった、なんていつも思っている事をまた思う。
歌いきった後から眺めたひしめく客席と無数のペンライトの眩しい光景は、いつ見ても新しくて忘れられない。
――そんな合同ライブ『エルダーハンド』から数日。それは思わぬ反響を呼んだ。
司くんが用意したライブ映像を見たレオさんと瀬名先輩には満足してもらえたらしい。特に作曲した本人には今回のステージに舞踏会の要素を入れた事がめっぽう気に入ったらしく、マヨさんの力量を改めて痛感したと一報入った。
その月永レオが太鼓判を押すという存在で、マヨさんにもちょこちょことトレーナーないしはアドバイザーとしての仕事が舞い込んでき始めた。…たまに変な笑い方してるけど、まァ喜んでるみたいだし良いか。
タッツン先輩にもまた個人の依頼が増え、最初こそ『元スーパーアイドル 風早巽』の認識だったもののすぐに『ALKALOID 風早巽』として扱われるようになって嬉しいと笑っていた。今度雑誌で特集組まれるって言ってたし、チェックしとかないと。
そうしてあの日から一変して、おれ達のアイドル活動は多忙を極める事になった。
結果的に今回のライブはメリットしかなかったらしい。それもこれもマヨさんとレオさんのお陰か。
マヨさんがあの時『自分』を出してくれたから、レオさんがおれ達に『可能性』を見出してくれたから。どちらかが欠けていれば成しえなかったはず。
今回の本当の『先駆者』はこの二人だ。
――なんて良い感じに纏まろうとしているというのに。
おれは独り、思いのまま殻を破れずにいた。
それは仕事云々じゃなくて精神的な話で。依頼も評判も貰えてるしそこは問題ないんだけど…おれはここの所以前にも増して考え事をするようになってしまった。
もちろん全部ヒロくんの事だったりするけど。
「…………」
その日の晩も、おれはベッドの上で物思いに耽っていた。
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作者名：冴波せつ | 作成日時：2020年5月4日 12時
