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愛することが罪ならば。03 ページ13




日本中が、この恋に涙する。そんな回しつくされたありきたりなキャッチコピーがテーマの
この映画は、今日本で大ヒットしていた。若手ナンバー1の女優と俳優が共に主演を果たしていて、
若者だけでなく幅広い層を巻き込んでヒットを飛ばしているのだ。

話のストーリーは、まさに現代版ロミオとジュリエットだった。御曹司の男と、お嬢様の女。
けれど彼らの父親同士は仲が悪く、いつも睨み合っている。パーティで恋に落ちた彼らは、
周りの目を盗んでたびたび逢い引きを繰り返すようになる。けれど御曹司の男が、
許嫁との婚約が決まる。家か、恋人。迷う男に、逢い引きに気づいていた父親が
婚約をしなければ恋人の家を潰すと脅す。それで決心をした男は恋人と別れ、許嫁と結婚する。
そんな話だった。


「ウサギだね。」


笑うと、目の前で水に濡らしたハンカチを目に当てていた彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめた。
ふいっと視線を外して、アイスフロートの上に乗っているアイスをつつきはじめる。
それにごめんって、と弁解しても変わらずに拗ねた表情は崩れない。
どうやら姫のご機嫌はそう簡単に治らないらしい。


「そんなに面白かった?」

「黒木くんは?」


ふっと笑う。頬杖をつきながら彼女を見つめれば、じっと見つめ返してきた。
大きな、一つの穢れも知らない綺麗な、きれいな瞳。その綺麗な瞳に、
俺はどんな風に映っているんだろう。鏡のように一点の曇りもない瞳に見つめられると、
俺がひどく薄汚いものだということを再確認させられるように感じる。
だから、綺麗で純粋なものは正直言って苦手だった。

(見つめ返すようになったな。)

出会った頃は、見つめればすぐに視線を逸らしていたのに。
頰を赤くして、目を合わせようとしなかったのに。いつからだろう。


「面白かったよ。」


いつから、彼女はこんなにも俺をまっすぐに見つめるようになったんだろう。目の前でこんなにも真っ直ぐ俺という人物を見つめてくれるようになったのは、いつだ。
ずっと前からだった気もするし、最近のような気もする。
アイスコーヒーの氷が、カランと甲高く音を立てた。


「ほんとに?」

「ほんとだよ。」


疑うような視線を向けられる。そんなに、つまらなそうな顔をしていたのだろうか。
笑いながらコーヒーを口に含む。流れ込んでくる冷たい苦さを、
俺は頭に残る台詞と共に飲み込んだ。


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Kobato*(プロフ) - 凛奈さん» 本当にこっちが感謝です(笑)更新したときには、是非読んでみてください* (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - 凛奈さん» いやいやいや…!凛奈さんのコメントにどれだけ書く気を貰っているか…!正直に言うと、新しい作品を作ったときや更新したときに凛奈さんがコメントしてくれないかなぁ〜って思うことよくあります(笑)毎回毎回素敵な感想も頂いて…! (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - ?0704さん» 今、またなんとなく書きたいものが浮かんでいるので更新したときは是非読んでみてくださいね! (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - ?0704さん» ありがとうございます!この話は私が書く話の中でもすごく深いものといいますか…とりあえず上手く表現したいことが伝わるか不安だったんですが、そういってもらえて本当に嬉しいです!黒木は本当に泣けますよね(´;ω;`) (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - まみさん» 更新履歴まで見ててくださったんですね…(涙)更新遅くてごめんなさいOrz、こちらこそまた時間がありましたら読んでやって下さいね* (2017年7月9日 16時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kobato* | 作成日時:2017年6月11日 19時

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