泡沫少女の泡沫ノ恋。―第弐章―【練紅覇】

.。o○ 番外編 ○o。.　・「?」 ページ50

頬を撫でる風が心地よく、心を洗い流すようにゆったりと流れるように吹く。

初夏の風。

その風は周りの空気とは、少しだけ温度が違い、生温い空気よりも少し涼しい。

金色のリボンがついてある白色の帽子と雪色のふんわりとした感じのワンピースを着用した

漆黒の幼い少女は城の庭にある木の幹にちょこんと座っていた。

その少女の隣にはくせっ毛の黒髪を風になびかせる少年が座っていた。

少年は白色のブラウスに漆黒のサスペンダーの半ズボンを着用していた。

サスペンダーはだらんと左右に垂れている。

そしてその木の下にはサラサラの綺麗な黒髪の少年が腰掛けていた。

少年は執事のような格好をしている。


漆黒の少女は、その黒曜石のような漆黒のガラスの瞳で自分の腕を見つめる。

その瞳には何が映っているのか、その瞳で見えるのかすらも分からない。

だが少女はただ、雪のように白い腕から滴る真っ赤な液を見つめていた。

それを見たくせっ毛の少年は、静かに少女の腕を取ると、

少女の腕の一筋の切れている部分をゆっくりと舐める。

くせっ毛の少年の薄桃色の舌に深紅の液が付着した。

その行動を、少女は虚ろな瞳で見つめていた。

くせっ毛の少年は少女の一直線に切れた腕から血が出なくなるまで

切れた部分を吸う。

ようやく出なくなると、くせっ毛の少年は少女の腕を離した。

少女も少年も無表情のまま。


その時、不意に少女の瞳から透明の涙が流れ出した。

その涙は少女の頬を伝い、雪色のワンピースに落ちる。

それと同時に、くせっ毛の少年の右目が金色に変色した。

本来の瞳の色は澄んだ蒼色だというのに。

また、それらと同時に、サラサラの黒髪の少年の瞳から、小さな小さな宝石がぽとりと落ちた。


エテルノ王国の子供は、奇病にかかることが多かった。

だが、それらを全ての大人が無視をした。

なぜならそれらの奇病は二十歳限りで治る病だと経験上分かっているから。

しかし王族の者は何故か･･･かからなかった。


「･･･私がきっと、助けるから。***も***も」


少女の言葉に、二人の少年は目を伏せた。

この奇病が、二十歳になっても治らないと、分かっていて。


でも、その言葉を信じたくて。

*

幼い頃の夢を見、カルラは目を覚ます。

煌帝国と戦争を行う日の早朝。

その戦争に、カルラはあの漆黒の少女がいると知っていて。

「愛しています。A様」

そう告げることも、叶わなくて。


―きっと"僕"に未来なんてない

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