メカクシ団(非公式)の日常2 (ページ37)

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昔話らめんとｂｙノナページ37

ぱっくりと開かれた腹――。
すっきりと無くなっている腹の中身――。
苦悶に歪んだ表情――。

どれもこれも全て、ボクが欲した子のものか――。

ノナの過去話。

ばしばし、肉を打つ音だけが部屋に響く。

「アンタが全部悪いのよ！あんたが…あんたが、ユラより、長男より、全部できるからッ！」

美しかった母の顔など微塵の欠片もない、醜い顔。また、手を振り上げる。
それを苦々しい顔で口を挟まず見ている父。

問題の、兄、否ユラはいない。きっと、最近与えられた自分の部屋で、また泣いているのだろう。自暴自棄に陥り、また。

これは、兄の所為などではない。病んでしまった母の所為だ。
突き詰めれば、浮気をした、父の所為だ

母は父が浮気をしていたと知って、壊れてしまった。
『浮気』それだけでは母は相当の悲しみと怒りを覚えたらしい、それの当て馬がボクだった。

母曰く、『長女は長男を引き立たせるように、少し長男より下がりなさい。』らしいのだ。

その時点で、長女の存在価値はどんだけすくねぇんだよ？

まぁ、僕が、ユラより勝っていたせいなんだけど。

「なにぶつぶつ言っているの？！」

「…何でもありません。もう、寝ます。」

「…ッちっ」

おいおい母さん、聞こえてますって。

ボクには前々から渡されていた自分の部屋に入った。

しかし同時にこんこん、とノックが聞こえた。

『ねェ…ノナ、御免、入らして…』

「はい。」

かちゃり、という音とともに母親似の黒髪の兄、ユラが入ってきた。

「ごめん、ね…本当に。俺の所為、で…」

「いいえ、ユラの所為ではありませんよ。でそれを言いに来たのですか？ならばもう…」

「あ、違う違う。ねぇ、ノナ、なんか最近変な事ってない？」

「…たまに、相手のことが分かってしまう、とかですか」

「そう。それってね、俺の目が『特殊』だからなんだそうだ。」

何となくだが分かっていた。自分が化物なのは。おかしいのは。変なのは。

「ノナは、分かってたかな？賢いし。」

「はぁ…。」

どうでも良かった。分かっていたから。

「あ、そう言えばね、その眼の能力にも種類が有るそうなんだ。きっと、ノナのは…『目を通す』だと思うよ。」

「へぇ。ユラのは？」

「僕のは…『目で殺める』…なんだよ…ッ」

ユラは悔しそうにそう呟いた。