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空座決戦編 5-3 ページ23

霊圧を遮断する義骸のせいで、彼の居場所がわからない。
けれど。けれど、ほんの少しだけ揺れる霊圧が香る。

淡い懐かしさと、その奥に混ざる黒く重いソレ。

きっとわたしにしかわからない程度の揺れだと思った。


『ーーっ、』


崩れ落ちたビルの下。
瓦礫に寄り掛かるようにして、目を閉じている平子が見えた。
荒く呼吸をする声が聞こえる。

その姿に思わずひゅっと喉の奥が鳴る。

肩から胸元に掛けて大きく裂けたシャツからは生々しい傷が覗いていた。


『・・・、』


声はかけず、そっと近づきしゃがみ込むと胸元へと手を翳した。
流れ続ける血にAの表情が歪む。


ーーこんな傷でも意識が飛ばないなんて。


懐かしい霊圧の奥に揺れるのは禍々しく、刺々しく、濃く、重い霊圧。
死神からは絶対に感じることのない黒い力。

僅かに震える手に気付かぬフリをして両手へと霊力を込めた。



「ーーーっ、‥A、か‥?」


苦しげだった呼吸が少しだけ止まる。
ゆっくりと開くその瞳はあの頃と同じ薄い黄金色をしていた。


『平子、隊長‥』


細く呟くAの声。
目の前にあったのは変わらない銀色の髪。いつかの髪飾り。

自分の知る彼女は百年前のあの夜で止まっていて、あどけなさの残る少女だった。
今、目の前にいるのはあれから随分と大人になった彼女。
こんなに近くでこの濃紫色の瞳を見るのはいつぶりだろうか。

深く煌めく瞳はこんなにも美しいのに、その奥があの夜を思い出してしまう程不安げに揺れていた。
不安を取り除いてやれなかった、あの時の自分を何度呪っただろう。

思わずそっと手が伸びる。


「・・A、」
『っ、』


平子がおもむろに触れようと手を伸ばせば、Aの肩が僅かに揺れた。


ああ、そうだ。
これが百年前とは決定的に違うもの。
何度夜を越えても、越えられない溝がそこにある。


「・・怖いか。」
『っ、』


揺れる瞳が、その答えだった。

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設定タグ:BLEACH , 平子真子 , 市丸ギン   
作品ジャンル:アニメ
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おもち(プロフ) - ううさん» 二週目ありがとうございます( ; ; )!現在最初の方から加筆修正中で読みにくい点もあると思いますがぜひいつでも読んでいってください。わたしもギン乱推しなので、二人の妹になりた過ぎてこうなりました笑これからもよろしくお願いします! (2020年12月20日 0時) (レス) id: 1513b391e8 (このIDを非表示/違反報告)
うう - 全部読んで2周目です。ギン乱推しなのです最高です。ありがとうございます。もっと他の人にも読んで欲しい作品です。 (2020年12月20日 0時) (レス) id: bccb65748a (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - もももさん» 文字が多くて分からずらいとこが多かったですよね( ; ; )!読んでくださりありがとうございます! (2020年9月6日 0時) (レス) id: 1513b391e8 (このIDを非表示/違反報告)
ももも - ぶっ通しでしっかり読ませていただきました!!これはもうぶっ通しで読まなきゃいけないシーンですね!!(*´∀`*) (2020年9月5日 22時) (レス) id: ce0dea41c8 (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - もももさん» そう言っていただけて嬉しいです!ここのお話はどうしてもぶっ通しで読んでいただきたくて、遅くなってしまいました‥( ; ; ) (2020年9月5日 19時) (レス) id: 1513b391e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おもち | 作成日時:2020年8月24日 21時

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