あなたと生きる世界 -尸魂界編- (ページ9)

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尸魂界編　1-2 ページ9

『こっちが隊主印の必要なやつね。それとこれは次、六番隊に回すやつ。』

腕いっぱいに抱えた書類をギンの座る席へとテキパキと振り分ける

そんな彼女の様子をつまらないとでも言いたげな表情で見ていたギンは、自席に積み上がって行く書類から目を逸らした

『これはチェックが終わったら経理担当に提出するやつだから、わたしに返してね！』

あとこれが、と言いかけたAの声が途切れる

『ねぇ、おにぃ。聞いてるの？』
「聞いとるけど～・・」
多過ぎや、ボク過労死してまう。

そう呟いた彼はやる気がなさそうに机へと片肘をつくと、
大きな右手に自身の頬を預けて、
やっぱりやる気の無い目でAを見上げる

まだ始業の鐘がなって幾刻も経っていないというのにこの男は。と、Aが溜息を吐いた

『すぐ溜めるおにぃが悪いんでしょ！毎日やってればこんなことにはなりません！！』

腰に手を当ててピシャリと言ってのけるAの背を
少し離れた自席から副官補佐のイヅルが見つめていた

いいぞー！もっと言えー！！とでも言いたいのだろう。
その手は嬉々として握り締められている

もちろん、そんな彼の様子を見逃す筈もないギンは
イヅルを揶揄ってやりたい気持ちを抑えつつ
ぷりぷりと頭上で怒っているAにもう一度視線を滑らせるも戦意喪失。

可愛い妹がこうして厳しく言ってくれる日常に甘えてしまっているのが事実ではあるのだが、やっぱりそんな日々は悪い気はしないのだから自分もよっぽど彼女に絆されてしまっていた。

「はぁ～。いつからこない厳しなってんやろ・・」
昔はえらい可愛えかったんになぁ。

おにぃ、おにぃ、てボクの背中を追いかけてた時のAはそらもう可愛えったらなかったで。

そう、言い終わるが早いかAの霊圧がゆらり、と揺れる

ーーードンッ！！！

目の前で聞こえた大きな音に思わずゆっくりと視線を戻せば、
Aの腕の中にあった書類が光の如く速さで机へと叩きつけられていた

有無を言わさぬ彼女の濃い紫色の瞳が、随分と冷たく光っている事に今更ながら気付く

『あとこれ、"市丸隊長"のサインが必要なやつね。』
「・・・は、はい。」

ああ、これは逆らってはいけないやつだ。

時刻はまだ日が昇りきらない午前中の瀞霊廷。

ギンとイヅルの頭には奇しくも同じ言葉がよぎるのだった。