あなたと生きる世界 -尸魂界編- (ページ40)

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尸魂界編　10-3 ページ40

『・・ぁ・・あぁ、』

おにぃは全てを知っていたの？

全てを知って、この百年間、
わたしの隣にいたの？

何が本当？何が嘘？

わたしの知るあなたはウソ？

『ぅ、ああぁあぁああ！！』

記憶の奥で鳴り続ける警鐘が酷く痛む

頭を抱える様にして、Aは膝から崩れ落ちた

「ああ、こらあかん。」

議事堂の階段からいつもの声が聞こえる

トン、トン、とテンポ良く降りてくる足音が聞こえる

ゆっくりと顔を上げるも、溢れ出す涙でその姿が滲んだ

「相変わらず、意地の悪いお人やわァ。」
ボクの可愛い妹に意地悪せんといてあげてくださいな。

そう言ってギンが笑う。
腰に携えた刀に彼の手が伸びた。

『ーー・・、』

零れ落ちる涙を拭う事もせず、
呼吸すらも忘れて、その姿を何処か他人事の様に見ていた

頭が追いつかないのだ。

二人が敵なのは、わかった

尸魂界の、瀞霊廷の、わたし達死神の敵なのはわかった。

平子隊長を殺したのも、二人なんだとわかった。

でもわからないの。

いつも優しく微笑んでくれる彼が、
ギュッと抱きしめてくれる彼が、
わたし達を護ってくれていた彼が、

その全てが嘘だったのだ、と。
そう、この景色は伝えているのに。

未だ右手に残るおにぃの残り香が、
一緒に過ごしたこれまでの日々が、
ここにあるわたしの心が、わかってくれないの。

お願いだから、嘘だと言って。
驚かせてご免な、そう言って笑って。

いつもみたいに、抱きしめてよ。

ギンが目の前までやってくる

わたしはもう、指一本動かせなかった。

「ギン、連れて行ってもいいんだよ。」

遠くから随分と落ち着いた声が聞こえる

「イヤやなァ、藍染隊長なに言うてはるの。」

微笑む彼が、その斬魄刀を抜いた

「こない使えん子、連れてく意味があらへん。」

手の届くほど目の前まで歩いて来たギンは
膝をついたままのAに合わせて片膝をついた

濃い紫色の瞳には大粒の涙が絶えず溢れ続ける

拭う事も、拭われる事も無く、
ただ零れ落ちる涙に濡れた瞳が、すがる様に彼を見上げた

「ーー射殺せ、神槍。」

そう小さく呟いた彼の刀がAの胸元に迫る

何より早く伸びる神槍なのに
酷くゆっくりと伸びている様に感じた

『・・うっ、あ"、』

その刀は迷いなく胸の中央に刺さり、無情にも背中から突き抜けていく

『お、にぃ、』
「・・っ、」

痛む傷に滲む視界。

最後に映った彼の顔は、
今まで見たことがない程に歪んでいた