あなたと生きる世界 -尸魂界編- (ページ37)

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番外編【そして絶望の足音を聞く】2 ページ37

彼女の言う" 誰か "はきっと、護廷十三隊の隊長格の事だ。

三千人を超える大所帯である護廷隊の中でも一際目立つ隊長格

決して目指せばなれるというものでは無く、
才能と努力あってこそのその地位には誰もが憧れ、それぞれの隊にファンも多い

「行くわよ、A♡」

無論、ミーハーな乱菊が黙っていられるわけが無かった

『ちょ、ちょっと、おねぇ！』

引っ張られる腕に慌てて着いて行く

しかし食堂の隅にいた二人は入口に近く事も出来ず、
学生の中でも一際幼く背の低いAは、乱菊に引っ張られながら人だかりに飲まれかけていた

「ああ、あそこにいた。」
おーい！市丸！

突如として食堂に響く声

いきなり聞こえた自身の名にAが眉間にシワを寄せる

さっきまで群がっていた人々が一斉に左右に捌け、
名を呼んだ生田と腕を掴んだままの乱菊の間に綺麗な一本道が出来た

「あ、あれは！」

驚いた声が聞こえて、その背中から少しだけ顔を出した

その視線の先。思わぬ来客に目を見開く。

『藍染副隊長・・！』

生田の一歩後ろを歩き、こちらに向かってきていたのは
護廷十三隊五番隊副隊長・藍染惣右介だった

彼は一際人気の隊長格だ

そして何より、彼女達の追いかけているギンが所属する隊の副隊長でもある

「やあ、はじめまして。五番隊副隊長の藍染惣右介だ。」

君がギンの妹君かい？
藍染はそう言って少し屈むと、まっすぐとAの瞳を見つめる

Aの腕を掴んだままだった乱菊が慌てて手を離し彼女の背中を少し押した

『は、はい。市丸 Aと申します。』

義理の兄がいつもお世話になっております。
そう続けるとAは慌てて頭を下げた

「義理？」
『はい！幼い頃に助けていただいて、』

それだけで事情を理解したらしい彼は、眼鏡の奥に見える瞳を少しだけ細めた

「そういうことだったのか。」

随分と大変な思いをしたね。
その大きな手がAの頭に触れる

「君の話は生田先生から聞いているよ。ギンにも劣らぬ実力を秘めていると。」
『そんな！め、滅相もございません・・、』

思わず目を逸らしたAに藍染の瞳が僅かに開いた

「どうやら性格はギンと正反対らしいね。」

そう言われて目線を向ければ彼は穏やかに笑っていた

「A、また会おう。」
ギンにはまだ、内緒にしておくよ。

藍染は軽く手を上げると振り返り、生田と共に颯爽と食堂から出て行った

(きっとこの日から、何かが始まっていたんだ)