あなたと生きる世界 -尸魂界編- (ページ36)

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番外編【そして絶望の足音を聞く】1 ページ36

ーーそれは、今から百十年前の秋。

もしかしたらこの時には、
わたし達の運命を変える何かが始まっていたのかもしれない。

番外編【そして絶望の足音を聞く】

「お久しぶりです、生田先生。」
「あぁ！藍染副隊長！ご無沙汰しております。」

お忙しいところ、いつもありがとうございます。
そう深くお辞儀をしながら霊術院の教師である生田は
打ち合わせの為にやってきた藍染へと声をかけた

柔らかく笑う彼を連れ、応接室までの道を並んで歩く

「そうだ、藍染副隊長はご存知でいらっしゃいますか？」
「・・？」

その途中、生田が思い出した様に声を上げた

「あの神童、市丸ギンの妹君が今年入学しているんですよ。」
「ギンの、ですか？」

ーー知らなかったな。

僅かに目を見開く彼に生田が微笑んだ。

ギンに妹がいるなんて話、彼から聞いたこともない

「ええ。やはり兄妹ですね。まだ一回生ですが特進クラスで頭角を表してますよ。」
「・・そうですか。それはぜひ一度、お目にかかりたい。」

彼は僕の部下だ。挨拶をしておかないと。
そう笑う藍染の穏やかな笑みにつられる様にして生田も笑う

「せっかくですから案内しますよ！」
どうぞ、こちらへ。

彼が興味を示した事が嬉しかったのか、生田が嬉々として案内を始める。

ありがとうございます。そう呟いた彼の眼鏡の奥が光った気がした。

その真意は、何者にも捉える事など出来ない。

お昼時の食堂にAと乱菊の姿があった。
いつもと同じ角の席にトレーを置くと向かい合わせに腰掛ける

「でね、この前の実習で倒した虚がとにかくブサイクなのよ？」
『虚にぶさいくなんてあるの？』

あるわよ。あんた顔見てないの？
心外だ、とでもいう様な表情を浮かべつつ、その箸はお昼に選んだサバの味噌煮へと伸びる

相変わらずな彼女の様子にふふふ、とAが笑った

『一体一体覚えてないよ。』
「ま、それもそうね！」

微笑む彼女にカラッと笑った乱菊が口元をモグモグと忙しく動かしながら後方を振り返る

ん？とつられて視線を向けた先は食堂の入口だった

「なにかしら。随分騒がしいわね？」

お昼時の食堂はいつもガヤガヤと人が多い。
だがそれでもわかる程に、今日はやたらと食堂の向こうが騒がしいのだ

突如、女子生徒のキャー！という黄色い声が辺りに響き渡り、乱菊がおもむろに立ち上がる

「ねえ、もしかして誰か来てるんじゃない？！」

そのブルーの瞳が爛々と輝きを放った