あなたと生きる世界 -尸魂界編- (ページ34)

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尸魂界編　9-2 ページ34

中央議事堂の位置する地下通路をイヅルを追ってひたすらに走る。

目の前に広がっていた惨状と、突如現れた彼に頭が追いつかない。

ーー何故、何故イヅル君が、

早る気持ちを落ち着ける事が出来ないまま、顔を顰めたAが強く床を蹴る

明るい光が見えて外に飛び出せば、
後ろから追いかけてきていた日番谷がAを追い越し走り出した

「待て吉良！質問に答えろ！！」

走る足を決して止めることなく、その背中へと叫ぶ

「中央四十六室をやったのはてめぇか！？」
「・・いいえ。」

変わらず前を向き、走り続けるイヅルは言う

「僕はただ、日番谷隊長達が来られる少し前に内側から鍵をあけてあそこに入れてもらっただけです。」
「入れてもらっただと？誰にだ！！」

少しだけ振り向いたイヅルの目が妖しく光った

「・・決まってるでしょう。」
四十六室に、ですよ。

『っ！！』
「ふざけてんのかてめぇ・・！」

当たり前だろう、とでもいう様に淡々と答えるイヅルに日番谷の瞳に憤りの情が浮かぶ

「そんなことより、いいんですか日番谷隊長？」

ちらり、と視線を向ける彼の表情はやはり読めない

「雛森くん、もう十番隊の牢には居ませんよ。」
「ーー！！！」

その言葉に日番谷の顔色が変わった。

彼の張った高等結界・鏡門を鬼道の得意な雛森が解き脱獄したと、イヅルは言うのだ。

翡翠色の瞳を僅かに震わせた彼が、奥歯を噛みしめていることに気付く。

その様子に目を細めたAが呟いた

『探します。』

日番谷の後ろを駆けるAが、足を止める事なくスッと伸ばした指先を額へと当てる。

風に揺らぐ霊子がAの銀色の前髪を攫った

『 " 縛道の五十八・掴趾追雀 " 』

呟く彼女の指先が、空を走る。

一つの霊絡を見つけ、細い糸を引いた

『補足成功。・・雛森ちゃんは、地下議事堂です！』

すまねぇ、と小さく呟いた日番谷が振り返らないまま声を上げる

「松本！A！任せていいか！」
「どうぞ！」
『もちろんです！』

聞くが早いか、グッと脚に力を入れた彼は方向を変えると見えぬ速さで隣を駆け抜けて行った

日番谷の気配が遠のき、イヅルの足が止まる

『イヅル君！』
「何、逃げるのやめたの？」

困惑しているAを庇う様にして乱菊が前に立った

「僕の役目は、あなた方をここで止めることです。松本さん、」

そして、

「A副隊長。」

ひやり、と冷たい視線がAを捉える。
その表情に細い肩が揺れた。