あなたと生きる世界 -尸魂界編- (ページ22)

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尸魂界編　4-1 曇る世界ページ22

隊長印が必要な書類を腕に抱えて隊主室の扉を開けた。
ガラリとしたその部屋にため息が溢れる

今日もギンは来ていない。

「萌、副隊長・・、」
『・・イヅル君、』

後ろから聞こえた声に振り返れば
少し俯き気味に話しかけてくる副官補佐の姿があった

「隊長はどちらに行ってらっしゃるのでしょうか・・」

ここ数日、彼の様子が気になり眠れていないのだろう。
目の下が少し窪んでいる

『・・きっとまた、ふらっと帰ってくるよ。』
心配しなくて大丈夫。

そう言うとイヅルの背中を押して、執務室へと戻った

Aとギンは現在、彼の持つ邸宅にて共に生活を送っている

数十年前、ギンがまだ五番隊の副隊長を務めていた頃。
共に住もう、と彼は約束をした。

そして三番隊隊長になり、副官に彼女を任命したその日に約束は果たされ今に至る

家には帰ってきている

夜遅く、わたしが寝た時間を見計らうかのように帰宅して
朝早く、わたしが起きる前には家を出ている

拭きれぬ不安が心に貼りつく

ギンに対して心配はあれど、不安を感じたことなど今までなかった

ーー何処に行こうとしているの、おにぃ。

書類と向き合う執務室。
滲む不安には気付かないフリをして、もう一度筆へと手を伸ばした

「A副隊長・・」
そろそろお時間です。

そう言ってイヅルの顔が机から上がる

『もうそんな時間か～。』

走らせていた筆を置いて、腕を天井に向けてグッと伸びをした

『ありがとう、イヅル君。ちょっと行ってくるね！』

未だ暗い顔をしているイヅルを気遣って少し明るく声をかけてやれば、それに気付いた彼も少しだけ微笑んだ

今日は例の旅禍についての報告会が一番隊にて執り行われる
その為招集可能な副隊長は集まるようにとのお達しがあった

ギンの行動も気になるが自分は三番隊副隊長だ

瀞霊廷の守護の為、今一度現状を整理しなければならない
隊長の不在で隊士を不安に晒すような事はあってはならない

『ーーわたしがしっかりしないと。』

一番隊舎に向けていた足で、強く強く床を蹴った