あなたと生きる世界 -尸魂界編- (ページ20)

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番外編【世界の形が変わった日】1 ページ20

最近のおにぃは少し様子が変だった

いつに増して何も言わないまま執務室から姿を消すことが増えて、
そうかと思えばふらり、と帰ってきてはわたしを抱きしめる

最近のおにぃはやっぱり様子が変だった。

番外編【世界の形が変わった日】

あれは確か、わたし達が出会って何十年かが過ぎた年の冬の日だった。

どんよりとした曇り空、辺り一面に降り積もる雪

確かにあった筈のわたし達の幸せは、その日から形を変えてしまった。

それは、何かが欠けてしまった日。

わたし達の生活は、酷く貧しく、質素なものだった。

いつの日だったかおねぇにもらった着物はあの頃よりも継ぎ接ぎが増えて、寸足らずにもなってきた。
相変わらず細い手足は随分と見窄らしい。

おにぃが狩りをして、わたしは木の実や果物を取って、
おねぇは家で家事をして、そうして３人で暮らしてきた

不思議な力を持つわたし達は、身体の成長が他の流魂街の住民よりも遅いのだという。

それでも、出会った頃に比べるとわたし達の背も随分と伸びた

それだけの年月が経っていた。

おにぃはいつだって優しくて温かくて、わたしとおねぇを守ってくれていた

風邪を引けば朝まで手を握ってくれた。
怪我をすれば一番に気付き駆けつけてくれた。

おねぇは姉御肌、というのだろうか。
適当な所があるけれど、酷く面倒見のいい人だった。

何かある度にぐじぐじしてしまうわたしをいつだって叱り、励ましてくれた。
おねぇが笑ってくれれば、わたしの悩みなんて随分とちっぽけな物に思えた。

マイペースでいい加減なおねぇと、飄々としていて掴み所の無いおにぃ

そんな二人に振り回される事も多かったのだけれど、
わたしは二人が大好きだった

おにぃは昔から一人でフラフラと散歩に出掛ける事が好きな人だ。

行き先を告げずに消えるのが悪い癖だと
おねぇは悲しそうに笑っていたけれど、
何も言わずに居なくなってはふらり、と帰ってくる彼に心配はしたけど不安はなかった。

おにぃは帰ってくると必ず柔らかく笑いながら
ごめんごめん、と謝ってくれるのだ

だから不安になる必要がなかった。

だってわたし達は
おにぃのことを、よく知っている。

ここから先は古い記憶だからか、余り覚えていないのだけれど
その日は確か、あまり木の実が取れなかったと少し落ち込みながら家に戻り
おねぇの家事の手伝いをしていたと思う