あなたと生きる世界 -尸魂界編- (ページ14)

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尸魂界編　2-2 ページ14

「僕たち、兄妹なんです！！」
「市丸隊長と市丸副隊長に憧れていて・・！」

グッと手のひらを握りしめて意を決した様に話し出す二人は、
キラキラとした目を二人に向けていた

ここ数十年、そう言って真央霊術院から護廷十三隊に入隊する隊士も少なくない。

三番隊・隊長市丸ギン
同隊・副隊長市丸A

彼等はここ護廷十三隊で約七十年近く三番隊の隊長格を務めており、その穏やかな隊風から新人隊士を中心に非常に人気が高いのだ

なにより、兄のギンは卒業まで六年かかる真央霊術院を僅か一年で卒業し五番隊の三席へと就任。
妹のAは女の身でありながら真央霊術院を三年で卒業し、その後五番隊の五席へ就任している。

当時二人は真央霊術院創設以来の神童兄妹と呼ばれ、
今でも尸魂界の歴史にしっかりと名を刻まれていた

そんな経緯もあった事により他の隊長格に比べると
彼等は瀞霊廷でも随分と有名であり、
特に二人は連れ添って行動している事が多い為
こうして話しかけられる事は少なくは無かった

「おおきに～。」
『嬉しいです！ありがとうございます！』

ペコペコと何度も頭を下げて去って行く隊士に、Aが微笑む。
ギンはと言うと離れて行くその背にヒラヒラと手を振って
ゆるり、と笑みを浮かべていた

遅めの昼食を終え、二人は並んで三番隊舎への道を歩く

帰る道すがらデザートのプリンがピカイチだったと満足そうに話す彼女にギンは呆れたように笑っていた

その刹那ーーー

ザワザワと木々の葉が揺れる音が辺りに響いてAの長い銀髪が風に舞った

『わわっ』

慌てて髪留めに手をやると、視界に入る銀髪越しに桜の木が見える。

青空に映える桃色に、浮かび上がるのは金色の髪と夕暮れに染まる隊主羽織。

胸の奥が軋む感覚とその景色に、思わず隊舎へと向けていた足を止めてしまった。

「・・A？」
『ーーーー、』

「え？」

風の音が耳に響いて、Aの声がよく聞こえない

『ううん、なんでもない。』

未だ風に舞う銀髪をサッとまとめながら
少し空いた距離をAが駆け寄ってきた

彼女の目元が潤んでいるのは、きっと風のせいだ

「今年も、桜の季節やなぁ。」

ぽつり、と呟く彼にAは返事を返さない

「なぁ、A。今度桜見に行こか。」
『・・ほんと、おにぃは桜が好きだね。』

俯いている彼女の表情は、自分からは見えないまま

「帰るで。」

そう言ってAの手を取って歩いた