尸魂界編 1-4 ページ11
太陽が高く昇りきる。
大きく開けた執務室の窓から春の陽気が流れ込んでくる。
もうすぐ桜の季節がやってくる。
時計が13時を差したとき、Aがおもむろに席から立ち上がった
『じゃ、わたしはお先に！』
「えぇ！？」
「お疲れ様です、A副隊長。」
何も聞いていなかったのか、ギンは驚いた表情を浮かべる。
扉へ歩くAを目線で追いかけるも、彼女は気に留める様子も無い
おつかれ〜！と、笑顔でひらひらと手を振るAは
イヅルへと笑いかけるとあっさりと執務室から出て行ってしまった
「A副隊長は本日半休を取られていましたよ。」
「えぇ・・ボク聞いてへん・・・」
呆気にとられた顔をしているギンに、イヅルは容赦なく次の書類を渡す
「ご安心ください。A副隊長からしっかり引継ぎをいただいていますので。」
「ほんま、いつからこない厳しなってんやろ・・。」
瀞霊廷・六番区
『ルキアちゃんお待たせ〜！』
ここは瀞霊廷にある人気の甘味処。
夕方には混み合うこのお店も、
お昼時はゆったりとした空気が流れている
十三番隊・朽木ルキアが先に座っていた角の席まで歩くと
その向かいの椅子へと腰を下ろした
『わたしは抹茶白玉アイスでお願いします。』
「私は黒胡麻餡蜜で。」
店員のお婆さんに声をかけると、
はいよ〜と言って暖簾の奥へと消えて行った
『どうしたの？話って。』
先に出てきたお茶をすすり、誘ってくれたルキアに視線を向ける
ほんの少しだけ背筋を伸ばした彼女にAはぱちぱち、と目を瞬かせた
「実は、明後日から現世へ駐在任務に行くことになりまして。」
『わ、いよいよだね！どれくらい行くの？』
「ひ、一月です！」
ルキアは緊張した面持ちを浮かべるとお茶に手を伸ばした
そんな彼女の様子にAは穏やかに口元へと笑みを浮かべる
『きっとあっという間だよ！ルキアちゃんなら大丈夫！』
「はい・・。」
励まそう、と明るく声を掛けるも彼女の顔色は晴れそうにない
むしろ少し陰るルキアの表情に、思い当たる事が一つしかなかったAは
もしかして、と身を乗り出した
『朽木隊長に伝えてないんでしょ！』
「なっ・・なぜ、それを！」
狼狽る様に顔色に変えたルキアにAが困った様に笑う
『妹のカンってやつかなぁ。』
ふふふ、と笑う彼女にルキアは思わず俯いた
「兄様はきっと、そんなことを一々報告するなと仰るでしょうから・・。」
『そっか、』
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作者名：おもち | 作成日時：2020年8月3日 17時
