番外編『神田ユウ.1』 ページ2
時間軸は壊滅事件終結後
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「あ」
「あ？」
腹が減って食堂へ行くと、子供の姿から戻ったらしい神田の姿があった。
自分は籠城したお陰で、神田は持ち前の回復力もあった為、事件後にも関わらずアレン達のようにベッドとお友達状態になることなく通常通り生活していた。とはいえ、彼と会うのはあの物置が最後に今まで無かったのだ。子供の姿だったこともあり、何だか彼に会うのが随分と久しぶりに思えた。
「戻ったのか。」
そう言うと彼はいつもの仏頂面になり、自分にいきなり六幻を突き付けてきた。
(うっ、お)
それをすれすれで避けた自分は頬に若干の冷や汗が伝うのを感じた。
「いきなりなんだ。」
「テメェ、あん時俺にしたこと覚えてんだろ。」
「はて、何のことだか。」
神田の言うことに思い当たる節が無い筈はない。だが素直にそうだと答えるのも何だか面白くないので適当にすっとぼけることにする。そんな自分に彼はまた深く眉間に皺を寄せて怒鳴り散らした。
「ざけんな！その顔ぜってぇ分かってる口だろ！」
「どうどう、落ち着け日本人形。」
「いい度胸だ切ってやる。」
負けじと煽れば神田は遂に発動する構えをする。周りの連中は自分達のやり取りが危険だと気付いてそそくさと距離を取り始める。他の連中がハラハラしながら青い顔で自分の身を案じているのが視線で伝わってくる。
そんな中、自分は何を思ったのかそんな神田を見て、この状況下で思い出に浸り始めた。
(やはり似ている。)
昔から思っていた、神田は少し彼女に似ている。彼女、というのは自分の元の世界にいた友人の一人だ。
気が強く、無愛想で、それでいて優しい。
思えばこの世界にいる人は誰も彼もが自分を囲ってくれる大切な人達、…＿＿＿＿"トモダチ"に似ているのだ。
みんな優しくて、素敵だ。
だからこそ、自分はこの世界を見届けたいと思うのだろう。
神田は、黙ってしまった自分を不思議に思い首を傾げた。そして此方へ近寄り、自分の顎の下を右手でガシリと思い切り掴んで無理矢理上を向かせた。
「ぐへっ、」
急にされたせいで苦しくて思わず声を上げる。何をするんだ、と思い見つめた先には強く揺らめいた群青の瞳があった。何だ、その何か含みのある色の瞳は。神田の気持ちが分からず首を傾げていると、恐る恐ると彼が口を開いた。
「…また気分悪くなったのかよ。」
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作者名：雪音 | 作成日時：2021年7月14日 0時
