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高校三年生は、忙しい。
夏休みが空ければ指定校推薦の校内選考が始まる。それに続いて推薦入試、そして一般入試が始まっていく。
受験の辛さ、将来への不安、高校生活が終わってしまう寂しさを胸に抱え今日もシャーペンを握る。
ベッドに放り投げた携帯が震えた。
ディスプレイには、彼の名前。
「もしもし？」
「もしもし。まだ起きてたの？」
「受験生は忙しいもの、寝てる時間がもったいないの…」
はあ、と分かりやすいようにため息をつくと彼は耳元でふふっと笑った。
「じゃあ僕との電話も勿体ない？」
「ふふ、まさか！周助と会えないだけでもっとストレス溜まりそう、癒しが何も無いわ。」
だと思った、と彼は面白そうに呟いた。
そう言う彼の表情が勝手に頭の中で映像化されていて、重症だなと改めて感じる。
それと同時に、彼がいなくなってしまったら私はどうなるのだろうとどうしようもない不安に駆られる。
「A」
「ん？」
「カーテン開けて、下、見て」
戸建ての二階が私の部屋。
私の部屋から見える景色は絶景だと、背中に彼の温もりを感じながら瞳を閉じたことを思い出した。
その景色を見るのではなく、下を見る。
彼の意図が、少しだけわかった気がした。
携帯を割れ物を扱うかのように握り、パーカーを羽織って部屋の扉を開けた。
「お母さん、周助が来てるの！行ってくるね！」
「あら本当に！気を付けてね、A。」
母は私の事を私よりも喜んでくれる。
向日葵の様に微笑んだ母に、いつか恩返しがしたいなと頭の片隅で考えて素足にローファーを履いた。
扉を開けると、見慣れた美しい茶髪が明るい月に照らされて、まるで彼が一種の芸術作品かのように佇んでいた。
「周助…！」
名前を呼べば、応えてくれる。
「A、おいで。」
歩み寄れば、腕を広げて待っててくれる。
暖かくて、大きくて、大好きな腕に包まれる時間が堪らなく愛おしくて目尻が熱くなった。
「A」
「なーに？」
「A」
「ん、もうなーに？」
「A…」
一度私を腕から離して、私の顔を綺麗な顔を歪めて見つめる。綺麗としか表現出来ない、瞳を潤ませて微笑んだ彼の顔を私は一生忘れないだろう。
彼の瞳を閉じるのをサインに私も瞳を閉じた。
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ゆーり - めちゃくちゃ感動しました！あえて主人公に手を出さないところとかがめちゃくちゃ不二っぽくて！ほんとに感動でした！ (2021年3月14日 16時) (
レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
桜田 しおり(プロフ) - 鮎太郎さんさん» そう言って頂けて嬉しい限りです。これからもこの作品をよろしくお願いします！ (2018年9月29日 20時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
鮎太郎さん - ヤバイです！不二先輩かっこよすぎます！ (2018年9月27日 22時) (レス) id: 41a4e5daec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜田 しおり | 作成日時：2018年9月14日 7時
