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「ごめんなさい…私…」
胸元で両手をしっかりと握って彼の瞳をじっと見つめても彼の瞳には熱などひとつも残ってなかった。
やはり淡い欲望のせいなのか、と心の中で溜息をついた。
「A、」
不意に名前を呼ばれて顔を思い切りあげると、彼が私の胸元を指さした。
彼に組み敷かれた際に、浴衣が肌蹴てしまったのだろう。胸元が緩くなっていた。
完全に事故なのだが、それでも愛しい人の前。
失態は失態、恥ずかしくて茹でダコになりそうだとどこか冷静に考えていた。
「ご、ごめんなさい……っ」
動揺が彼に伝わったのか、彼はクスクスと笑いだした。
年上の彼を持つとどうにかして彼に追いつきたくなるのは、誰しもが思うことなのではないだろうか。
「そんなに緊張しなくても…ふふふ。僕は何もしないって言ったでしよ？」
「…でも、周助……」
首を傾けて微笑んだ彼は、どこから見てもただの美青年であった。
「……私ね、初めてなの。こうやって、男の人と、同じ空間で寝るの。
こうやって…好きな…ううん、愛してる人と一緒に過ごすのって、何て言うのかしら……凄く凄く幸せなの。」
私のまとまらない話も、彼は真剣に聞いてくれる。
ああ本当にこの人を好きになって、この人を愛せるようになって良かったと心底思った。
心がじんわり温まって、それが目頭にも伝わったのだろうか。目頭が熱くなった気がした。
きゅ、と浴衣を掴んだ。
「…私、周助を、知りたいの……っ」
そう告げた瞬間、私の体は一瞬浮遊感を感じた。
気が付けば、彼の腕の中にすっぽり収まっている私がいた。
トクトク、と響く鼓動が彼に聞こえないか心配で息をするのも忘れそうになる。
羞恥心からなのか、何なのか、瞳から涙が零れそうになり思わず上を向いた。
彼の背中に、腕を回してもいいのだろうか。
彼と私を遮るように彼の胸の前に添えた私の腕が鬱陶しく感じる。
「周助…あの……私、周助になら」
その言葉を遮るかのように彼は私の唇に吸い付いた。
触れるだけ、まさにその表現が合う口付けだった。
「僕は、Aを大事にしたい。でも、Aを抱きたい……これは、僕のエゴかな。」
彼の顔さえ見えないものの、彼は少なからず動揺しているのか。
抱きたい、彼にそう言われたのは初めてで何と答えたらいいのか私には全く検討もつかない。
ああダメだ、そう思った。
ポタリ、涙が零れた。
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ゆーり - めちゃくちゃ感動しました！あえて主人公に手を出さないところとかがめちゃくちゃ不二っぽくて！ほんとに感動でした！ (2021年3月14日 16時) (
レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
桜田 しおり(プロフ) - 鮎太郎さんさん» そう言って頂けて嬉しい限りです。これからもこの作品をよろしくお願いします！ (2018年9月29日 20時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
鮎太郎さん - ヤバイです！不二先輩かっこよすぎます！ (2018年9月27日 22時) (レス) id: 41a4e5daec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜田 しおり | 作成日時：2018年9月14日 7時
