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「周助、私と死ねる？」
彼の引き込まれるブルーの瞳を見つめて、彼に問掛ける。
彼は戸惑いを見せたものの、満足気に口角を上げて私を引き寄せた。
「勿論だよ。」
彼の少しだけ大きくなった背中に腕を回して、五感全てを使って彼を感じる。
彼は、風だ。
私の全てを攫ってしまう、暖かくて強くて儚い風のよう。
風に全てを委ねてしまおう、ふとそんな事を思った。
「すごくAに触れたいけど、ここじゃちょっと、ね。」
彼に言われて今自分がどこに居るのかに気が付いた。
思い出の場所、と言ってもここは彼の意志を受け継いだ、彼らの意志を受け継いだ後輩達が切磋琢磨して彼らに追いつこうと彼らを追い越そうとしている場所。
そして、彼の青春を全て詰め込んだ大切な場所。
瞳を閉じれば彼が楽しそうに汗を流しながらボールを追う姿、彼が仲間たちと刺激し合いながら高みを目指す姿が映画のワンシーンのように浮かんでくる。
きっと彼は何年も前の話だと笑うだろう。
そして彼は切なそうに目尻を下げるだろう。
切なそうに、寂しそうに。
「ここは、周助にとっても、私にとってもすごく大切な場所ね、ここでまた周助に伝えられてよかった。」
「…あぁ、そうだね。ここは僕にとって大切な場所で、僕の原点だよ。」
私の肩を引き寄せながらテニスコートを静かに見つめた彼の姿が皮肉にも今まで見た中で一番綺麗で儚くて、思わず目尻が熱くなった。
「周助、後悔なんてさせてあげないわよ。」
目を見て言うには少し生意気で恥ずかしくて。
彼に近付きたくて大人ぶって、そんな事を言ってみせた。
そんな私を彼は受け止めてくれる、温かくて優しくて大きな腕で私を受け止めてくれる。
そんな彼のことを、私も受け止めたい。
「…A……」
「…何よ。周助には幸せになる権利しかないんだから。」
唇を尖らせれば、彼はふふと笑いだした。
何がおかしいのよ、そう言えば私の頬に温もりを落とした。
「それは、僕の台詞だよ。Aは、幸せにしかなれないよ。あとそれと、僕と生きる権利しかないんだから。」
そう自信満々に言う彼が酷く愛しくて涙が零れた。
こんな時まで泣かなくていいのに、夕陽に照らされて微笑む彼が見えなくなってしまうから。
「…馬鹿ね。」
彼の首に腕を回せば、彼は受け止めてくれる。
一生彼の傍にいよう、光悦茶色の世界に瞳を閉じた。
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ゆーり - めちゃくちゃ感動しました！あえて主人公に手を出さないところとかがめちゃくちゃ不二っぽくて！ほんとに感動でした！ (2021年3月14日 16時) (
レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
桜田 しおり(プロフ) - 鮎太郎さんさん» そう言って頂けて嬉しい限りです。これからもこの作品をよろしくお願いします！ (2018年9月29日 20時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
鮎太郎さん - ヤバイです！不二先輩かっこよすぎます！ (2018年9月27日 22時) (レス) id: 41a4e5daec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜田 しおり | 作成日時：2018年9月14日 7時
