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「今日は予定があるって言ってたのに、どうして？」
「ふふ、僕ってそんなに薄情に見える？」
いや、と呟く私。
テニスコートの金網の外から楽しそうにボールを追うテニス部員を見つめる。
「僕の大事な人の、大事な日だよ？それ以上に大事な事なんてないさ。」
彼は私の右手を包み込んで、テニスコートに視線を向けた。
寒いね、なんて言ってポケットに私の右手を導いた彼はさも当たり前かのような顔をしていて思わず頬が赤くなった。
彼を見つめれば、彼は見つめ返してくれる。
彼に微笑めば、彼は微笑み返してくれる。
彼に愛を呟けば、彼は愛を呟き返してくれる。
「周助？」
「ん？」
「来春から私は大学生になって、周助は社会人になる。」
「うん、そうだね。」
ポケットの中にある温もりを感じながら、ゆっくりと深呼吸をした。
「私は、周助の側にいていいの？」
大きな風が吹いて、私の長くなった髪の毛を弄ぶ。
風が全てを攫ってしまえばいい。そうしたら全てが楽になる。何も考えずに、ただの彼を愛して彼の横に居続ける事が出来るのに。
どうして大人になるに連れて、純粋に人を愛することが出来なくなってしまうのだろう。
ただ彼を愛してる、それだけで充分ではないのだろうか。彼を愛しているから彼と生きていくことがなぜ簡単に選択できないのだろうか。
間違いなく世界中の誰よりも彼を愛しているのは私で、世界中の誰よりも私を愛してくれているのは彼なのに。
「僕はAの横にいてAは僕の横にいて、それが僕の中の当たり前なんだ。
Aがいない当たり前なんて考えられないし、考えただけでゾッとする。Aがいて、僕がいる。Aの横にずっといるって、僕はAに出会えた時からそう決めてた。
僕はまだ未熟で、一人で生活を立てることは出来ないし、ましてやAを養うことも出来やしない。
それでも、Aを手放すなんて事は絶対にしない。そんな選択肢僕には有り得ない。
Aよく聞いて？もう一度言う。
Aがいて、僕がいる。それは昔も、今も、これからもずっと変わらないんだ。」
だから、と彼が呟く頃には私は彼が見えなくなっていた。
ただ彼の温もりが心地よくて、彼から零れる一つ一つの愛を全身で受け止めていた。
「だから、僕と生きてほしい。」
あなたと生きてみたい、そんな気がするの。
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ゆーり - めちゃくちゃ感動しました！あえて主人公に手を出さないところとかがめちゃくちゃ不二っぽくて！ほんとに感動でした！ (2021年3月14日 16時) (
レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
桜田 しおり(プロフ) - 鮎太郎さんさん» そう言って頂けて嬉しい限りです。これからもこの作品をよろしくお願いします！ (2018年9月29日 20時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
鮎太郎さん - ヤバイです！不二先輩かっこよすぎます！ (2018年9月27日 22時) (レス) id: 41a4e5daec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜田 しおり | 作成日時：2018年9月14日 7時
