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「あ」
思わず口を抑えたが、それは私が発した言葉ではなかった。
同じように口を抑えている財前くんの放った声らしい。
「あー…ども」
小さく、頭を下げてくれる財前くん。
今日は土曜日。休日で、財前くんが入部してから初めての休みだ。ここは本屋で、私は漫画を買いに来ただけで、まさか財前くんがいるとは夢にも思わなかった。
「…どうも…」
…気まずい沈黙が流れる。だめだ、耐えられない。チラ、と彼を見るとその左手には、表紙で察するに初心者向けのテニスのルールブックがあった。
「…あ！？…これはちょっと手に取っただけですわ」
私の視線の先に気付いた財前くんは、慌ててルールブックを棚に戻した。
…ほんまは買うつもりやったんかな。
私が見てたせいでなおさせてもーたんかも…
「…別に、立ち読みしてただけですしあんたのせいやないです」
「え！？」
私なんも言うてないけど！？なんでわかったん…！？
「ふっ、くく」
じ〜〜〜っと財前くんを凝視していたら、突然堪えきれないとばかりに笑いだした。なんで？
意味がわからない。この前から、財前くんの笑いのツボが全くわからない。
「はー……前も思いましたけど、先輩、顔に出すぎっすわ」
「！？」
慌てて顔を抑えたが特に変わった所はなかった。
…ただ、持っていた本が数冊落ちただけで。
「あ！」
拾おうと屈んで手を伸ばすと、もう一つ上から手が伸びてきた。
「あ、いい！いいです！ごめん！」
遠慮したが聞く耳を持たずに、私より早く、財前くんの手が床に落ちた漫画たちをひょいひょいと拾っていく。
「ああ……ありがとうございます…ごめんなさい…」
拾わせてしまった申し訳なさで顔が見れない。
そのまま受け取ろうと下を向いたまま両手を出すが、一向に渡されない。
不思議に思い、顔を上げるとなぜか不服そうな財前くんがこちらを見ていた。
「前も言いましたけど」
「？」
「先輩なんやから、敬語やめてくださいよ」
「あ、そうやったね…えっと、ごめんね、ありがとう」
…なんや、いい子やなあ
〜財前side〜
本を返すと、2度目のありがとうを言う笑顔の先輩と目が合った。
あの時のような愛想笑いとは違って、純粋な笑顔に見えた。
じっと見ていると、その口が開いた。
「…財前くんは、なんか買うん？」
「…いや」
「そっか。じゃあ私はレジ行ってくるから、…また」
「はい、また」
少し距離が縮まった気がする。そんな事を考えながら、先輩を見送った。
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におー - 更新楽しみに待ってます！ (2020年8月6日 7時) (
レス) id: 804a9814c8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめこ(プロフ) - ここの財前くんすごい可愛くて好きです…。いつも楽しく読ませてもらってます。 (2019年10月21日 1時) (レス) id: a01c44eded (このIDを非表示/違反報告)
ふじりんご(プロフ) - あっっ こういう系好き… (2019年9月12日 20時) (レス) id: 42d7d11660 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 私は関西人です嬉しいです (2019年9月4日 13時) (レス) id: 84f3235ae9 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - テニラビやってますやられてますか？私はみかんですねんという名前でやってますよかったら申請お願いします！あと更新頑張ってください私も光くん好きです (2019年9月4日 11時) (レス) id: 84f3235ae9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さゆ | 作成日時：2019年3月19日 8時
