我が主はわがまま姫【巴日和】 (ページ20)

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19話ページ20

sideA

本家に置いていた私物をまとめた。
しばらくは寮の方でいるつもり。
資金的に余裕が出来れば寮からは出るつもりだ。
日和さんと顔を合わせなくてもいいように。

「とはいえ、事務所では顔を合わすことになる…か」

でも仕事だ。
引き受けた以上私情でやめることはしたくない。

「…億劫だ」

考えることが多すぎる。
でも何かを考えておかないと別のことを考えてしまう。
この気持ちはもうなかったことにすると決めたのだから。

「大丈夫。大したことじゃない」

そう思わないとやっていけない。

巽「その顔はどうされました？Aさん…」
「…何かおかしいですか？」

久々に顔を合わせたと思えばこれだ。

巽「やつれてますな」
「…いやそんなことは」
巽「もう少し健康的な顔色をしていましたよ」
「いや、本当に元気」
巽「日和さんと何か？」

その名前を聞いた瞬間、視界はぼやけ涙が溢れ出した。
我慢していたものが決壊した。

巽「この状況を誰かに見られるとまずいのは私ですね」
「ご、…めん…なさ、い」
巽「私で良ければ話を聞きますが？」
「…聞いて、ください…」

全部吐いてしまいたかった。
自分の中にだけ閉じ込めておくことが辛いのだから。