【氏康】絶体絶命 ページ45
「だから無理ですって！」
目の前にいるのは北条親子。
現在、この二人に挟まれて困ってます。
頼りの甲斐姫は今日はいないし、小太郎は早々に「ククッ...混沌を楽しめ...」とかなんとか笑って消えていった。
「なんだ俺じゃあ不満か」
「やっぱりお父様には適わないのかしら」
いつまでもはっきりしない私に二人揃って「残念」と肩を落とす。
「ですから、私にはどちらが好きだなんだと選べないんですって」
「別にテメェの直感でいいんだよ」
「そうよ、私達はどっちを選んでも気にしないわ」
二人共優しい逃げ道を作ってくれるが、この場から逃がしてはくれない。
「...どっちも好き、じゃあダメですか？」
『ダメ』
そ、即答、だ、と...
息の揃った返事にそろそろ頭を抱える。
そろそろ胃が痛くなってきた...
しばらく伏せって地面とご対面していたが、チラリと二人を見遣れば、グロッキーな私のことなど意に介さず、ほらほら、ささっさと答えろと視線が急かす。
「...」
「......」
「.........」
「...............じゃ、じゃあ」
「間をとって雀で...」
だって仕方ないだろ、犬も猫も、どっちも可愛いんだから…
「なんだよ、結局決められねぇんじゃねぇか」
「ふふ、あなたらしいわね」
「からかわないでくださいよぉ...」
「悪かった、悪かった」
「ごめんなさいね」
「いや、まあ...いいですけど...程々にして下さいね」
「......」
「......」
「えっ、え、ちょっ、あの、返事してくださいよ」
「ははははっ」
「ふふ」
「笑って済まそうとしないで下さいー！」
本当に選べなかったんですよ、だって、猫を抱き抱える氏康殿も、犬の頭を撫でる早川殿も、可愛らしかったんですから
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作者名：甲斐櫓 | 作成日時：2018年6月22日 0時
