女王の朔望月 (ページ40)

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頭を撫で、髪を梳かれる心地良さに目を開けると緩やかな光が視界に入る

窓が空いているのかそよぐ風に髪が揺れる

数時間前と同じ部屋に同じ状態
確か起きたらまーくんが居て、Aが居なくて＿＿＿

「ｯ、A！？」

『凛月？』

「い、る……」

ガバッと勢いよく起き上がった先にはきょとんとした彼女の姿

たったそれだけが安堵感を沸き立たせ、崩れるように抱きつくと直ぐに身体に腕が回された

『身体は平気？ごめんなさい、今私しか居なくて…水なら＿＿』

「Aが居てくれるならこんな身体どうなったっていいよ」

『……そんな悲しい事言わないで』

起きたばかりの身体を心配して背中が規則正しいテンポで優しく叩かれる

この安心感と心地良さからしてさっきまで髪を撫でてくれていたのは間違いなく彼女

そんな安らぎをくれる人が数時間前に姿を消そうとしていたと思うと背筋が凍る

「……ねぇ」

『うん？』

「……俺はAと一緒に居たい」

喉が鳴るようなか細い声に僅かに開かれるコバルトブルーの瞳

それもそうだ。
俺だってこんな声が出ると思わなかった

「再会する前は1回だけでいいからって思ってた」

でもいざ会って話したらどんどん欲深くなって

まだ
ずっと
これからも

一緒に居たいって。そう感じちゃった

「……本当はAに何があったのか、会わない間何してたとか、どうして逃げたのとか。いっぱい聞きたい」

けれど今の彼女から聞けるのは多分自責の念だけ。

それに思い出させて苦しませたくないから

「＿＿俺待つよ。Aが自分から話してくれるまで」

『っ、』

「また前を向けるように傍に居る。笑顔を見せてもらえるように頑張る。

もしAと一緒にいて不幸になるって言うなら俺は喜んでそれを受け入れるよ。……例えそこが地獄でもね」

ゆっくりと身体を離し、彼女の手を自分の唇まで持っていき、視線を指先から上げると必死に何かに耐える彼女と目が合う

……あぁ。今ようやく分かった

「ふふ、ねぇA。」

『り、つ』

「忠誠を誓わせて」

本当はあんたもここに居たいんだね

「これからも傍に居させてよ。お姫様」

望んでくれるなら授業サボるし、ピアノも弾くし、あんたが好きって言ってくれたこの声で歌ってあげる

｢……泣かないでよ｣

『ごめ、』

｢いいよ。Aの涙は俺が拭うから｣

だからもう

1人で抱え込むのはやめようよ