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直人くんへ。 ページ28

直人は一人、Aとの思い出が詰まった公園のベンチで手紙を開け、読み始めた。



橘直人くんへ。

大人になった直人くんって、一体どんな人かな。
綺麗な顔立ちをしているから、きっと格好良くて好青年で……モテモテなんだろうね。

話は変わるけど、私が武道くんのことが好きだったのは、覚えているかな。
直人くんはトリガーで、色んな世界線を見ただろうから、もう覚えてないかも。

ヒナちゃんと会わなくなった彼と、恋人同士だった時間もありました。

何でトリガーや世界線のことを知っているかというとね、私が前に能力を持っていたからなんだ。
武道くんをあの日、駅のホームから突き落としたのは私。能力を譲渡して、彼には一度死んで貰わなくちゃいけなかった。

それで、彼と一緒にタイムリープしたの。
一度目のタイムリープから現代に戻ったとき、私は武道くんが落ちた所の正面のホームに立っていて、君が武道くんを助けたのを見て、君がトリガーになったんだって分かった。

それからは、"凜"という名で東京卍會に潜入したの。

聖夜決戦が終わったけど、ヒナちゃんは助かってなかった。だから、これからまた関東事変を迎えるね。
この手紙を書いてる今の私は、これから自分がどうなるのかわかってるから、何か変な気分。

ずっと、武道くんが心配だった。
だから私は動き出した。

愛した人を失って、後悔している彼の背中を押したかった。彼がまた、心の底から笑えるように。幸せに生きてもらうために。

私は、彼の記憶から何も言わずに消えることにしました。
だから、武道くんには私のこと、黙っておいてください。

彼は優しい人だから、きっと負い目を感じてしまう。

これを君だけ打ち明けたのは、橘直人くん。君が一番信頼できる友達だったから。

武道くんも直人くんも、人の幸せのために自分を犠牲にすることさえ厭わない、優しくて、私の大好きな人たち。

今まで何度も何度も諦めないで戦ったあなたたちには、私を忘れて幸せになってほしい。

その世界にきっと私はいないけど、ずっと果てしなく広い空の上から見守ってるよ。

出来ることなら、皆ともっと遊びたかった。
彼らの結婚式も行きたかった。

大切な人に恵まれた人生に少しだけ、悔いを残して来てしまった。

だから直人くん。
君は後悔しないでね。いつか私じゃない素敵な人に出会って、大切な家族と一緒にずっとずっと幸せにね。

Aより。

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作者名:桜花 | 作成日時:2022年10月20日 21時

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