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第3話 ページ4

「…そう。そんなことがあったのね。」

「はい。」

「赤音ちゃんのことも、あなたは辛かったでしょうに…Aのことも気にかけてくれたのね。ありがとう。」

「…俺にできることをやってるだけですよ。」

本当に、それだけだ。

二人で話していると、2階からゴホゴホと咳が聴こえた。
聴いているだけでも辛さが伝わる。とても息苦しそうだ。

あのときの彼らのように。

「あらあら。また咳が酷くなっちゃってるわね…Aはね、あんまり学校にいけてないの。体調をよく崩してしまうし、体がフラフラしてしまうことも多いわ。今日は元気があったように見えたのに…」

「じゃあ、勉強は遅れがちなんでしょうか。」

「…ええ。頑張ってはいるんだけどね。」

「…じゃあ、俺がAちゃんの勉強見ます。あの子のこと、彼女の兄に頼まれたので。」

「いいの…?」

「俺にやらせてください。俺、あの子と仲良くなりたい。もっとあの子と話してみたい。」

「なら甘えさせてもらおうかしら。あの子の部屋は2階の突き当りを右よ。」

俺は彼女から先程のクッキーと蜂蜜の入ったホットミルクを受け取り、それらをお盆に乗せて、部屋をノックした。

すると彼女はそっと顔を出した。

「…あ。えっと、さっきのおにいさん…」

「お菓子あるぞ。持ってきた。入ってもいい?」

「ど、どうぞ…」

ドキドキしながらもAは彼を部屋に入れた。

「改めて。俺は九井一だ。よろしくな。君のお兄さんの幼馴染。」

「い、いぬいA。よろしく…」

「実はな、Aちゃんに今日はプレゼント持ってきた!」

「ほんと!?」

「おっ、やっと笑ったな。そうそう。気に入ってくれるといいんだけど。開けてみて。」

「うん…!」

ガサガサと開けると…

「白いウサギのぬいぐるみ…!!かわいい…!!」

「気に入ってくれたか?」

「うん!すごく可愛い!ありがとう、ココ君…!」

…ああ。笑ってる。あなたの守りたかったこの子、笑ってる。赤音さん。見てますか。

「Aちゃん、あんま学校いけてないんだってな。」

「…うん。せきが止まらないし…元気が出ない日がいっぱいあるの。」

彼女の部屋のランドセルは全然綺麗なままだ。

「俺が勉強見てやるよ。」

「えっ!!いいの?」

「いいぜ。というか、俺がやりたいの。」

「お友達が来ることなんてめったにないからうれしい。」

そう言ってフワリと笑う彼女が、赤音さんに重なって見えた。

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桜花(プロフ) - 月華さん» 読んでいただき本当にありがとうございました!!ココ君の気持ちからしても主人公からしても辛いお話でした。切ないお話は初でしたので沢山考えて頑張りました! (2022年8月1日 5時) (レス) id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - 桜花さん» 切なくてそれでも温かいお話でした。夢主ちゃんと結ばれて欲しいような気もしましたがそれではココくんはずっと赤音さんを切れないんだろうなと。素敵なお話しありがとうございました。 (2022年8月1日 2時) (レス) @page39 id: cb2ce3c237 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 雪海さん» この物語もいよいよ終盤に向かってきてますね…最後までお付き合い下さいませ! (2022年6月26日 11時) (レス) @page27 id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
雪海(プロフ) - うう…切ない (2022年6月26日 10時) (レス) @page27 id: ea036f2a24 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 引きこもり隊さん» プレゼントの渡し方はこれがロマンチックかなって思ってましたっ!!こういう雰囲気いいですよね!!! (2022年6月22日 21時) (レス) @page22 id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜花 | 作成日時:2022年5月28日 19時

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