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第17話 ページ18

夜。
怖い思いをした彼女は、俺の傍を離れたがらず、俺は泊めさせてもらうことになった。

もう風呂を済ませて、寝る時間。
ベッドに入っているAちゃんを優しくポンポンと叩く。

「大丈夫だ、Aちゃん。もう怖い奴はいねぇよ。」

「…うん…」

「九井君、本当にありがとう。あなたが居なかったら今頃どうなっていたか…Aもジョンもあなたも…本当に無事で良かった…!」

イヌピーの祖母は、震えていた。

「…おばあちゃん、泣かないで…」

「A…もう寝ましょうか。今日はよく耐えたわね。A、九井君、おやすみ。良い夢を。」

「おやすみなさい…。」

彼女は静かに部屋を出ていくと、部屋には俺とAちゃんだけになった。

「さあ、俺達も寝よう。」

「ココ君…」

「何?」

「どっかいかないで…ココ君は、どこかへいかないで…」

「…ああ。俺はここにいるから。」

また、彼女に一つ嘘をついてしまった。俺はずっと、君のそばにはいられないのに。

彼女が成長するのが怖い。今でもよく似ているのに、今より大きくなって、綺麗になる彼女を見るのが。

彼女が赤音さんと同じ年くらいになった時、俺は彼女をあの人の身代わりにしてしまいそうで、怖いんだ。

にこっ、と力なく笑うと、今度こそ彼女は眠りについた。
すぐに眠る彼女を見て、本当に疲れたんだなと、労うように頭をなでた。

電気を消そうと、彼女の机のスタンドに手をかけたとき、日記が書きかけだったことに気がついた。少しページを遡ってみると、そこには、こう書かれていた。

****
8月1日 はれ
今日はね!ココ君と夏まつりいってきた!わたあめすっごくおいしかったよ!色んな店にまわって、楽しかった!
ココ君とデートした!ゆかたかっこよかった!
でも、お姉ちゃんや兄ちゃんとも、行ってみたかったな…

8月2日 くもり
今日は図書室に行ったよ!でもすぐ寝ちゃった。なんかココ君と遊ぶ夢みたー!

そこからは9月になるまでのページは破っていた。

9月1日 雨
兄ちゃんが少年院から出てきた日。
久しぶりに会えてうれしかったけど、手紙はうれしくなかったみたい。なんであんな怖い人になっちゃったんだろう…もう私のこと、嫌いなのかな。

俺は続きが気になって、その少し後のページも見てみることにした。

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桜花(プロフ) - 月華さん» 読んでいただき本当にありがとうございました!!ココ君の気持ちからしても主人公からしても辛いお話でした。切ないお話は初でしたので沢山考えて頑張りました! (2022年8月1日 5時) (レス) id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - 桜花さん» 切なくてそれでも温かいお話でした。夢主ちゃんと結ばれて欲しいような気もしましたがそれではココくんはずっと赤音さんを切れないんだろうなと。素敵なお話しありがとうございました。 (2022年8月1日 2時) (レス) @page39 id: cb2ce3c237 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 雪海さん» この物語もいよいよ終盤に向かってきてますね…最後までお付き合い下さいませ! (2022年6月26日 11時) (レス) @page27 id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
雪海(プロフ) - うう…切ない (2022年6月26日 10時) (レス) @page27 id: ea036f2a24 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 引きこもり隊さん» プレゼントの渡し方はこれがロマンチックかなって思ってましたっ!!こういう雰囲気いいですよね!!! (2022年6月22日 21時) (レス) @page22 id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜花 | 作成日時:2022年5月28日 19時

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