新たな金の使いみち。【九井一】

第16話 ページ17

それは学校から帰り、家から少し離れたAと祖母が育てている花畑に水やりをしていた時のことだった。


「やあ、君、乾Aちゃんだよね。青宗君の妹の。」

「…え？」

だ、だれ…？知り合い…じゃないよね…？
兄ちゃんの知り合い…？

「大丈夫、君に危害を加えたりしないよ、お兄さんと九井一さえ連れてきてくれれば…」

兄ちゃん…とココ君…！？
本当にだれなの、だれなの…！！こわい…！！

背中にナイフを隠していることに気がついたA。

「い、いやだ…！！」

「チッ、勘の良いガキが…！」

Aは走って逃げるが、病弱なのもあり、彼女には体力がない。すぐに息が切れてきた。

Aに襲いかかろうとする男。その時だった。

「バウバウ…！！」

「ジョン…！！」

「んだこの犬…！！」

逃げろと私を見つめたジョン。でも…！！
Aは急いでジョンのリードを引っ張って走って逃げた。

「ジョン、早く逃げなきゃ…！！」

「待て、んのガキ…！！」

よかった、あの人ここに初めてきたみたい。ここのことをよく知らない…！

茂みの中に入っていく。

「チッ、どこ行きやがった…！！」

携帯、携帯…！
Aは祖母が防犯に持たせてくれた携帯をポケットから取り出し、連絡先ファイルを急いで開く。

恐怖で震える手を抑えて必死に彼が出てくれるのを待つ。

“Aちゃん？”

「ココ君…！お願いたすけて！」

“どうした！？”

「変な人が…！」

“今は下手にそこから動くなよ、今すぐ”

「見つけたぞ、手間かけさせやがって…来い…！！」

「…！！」

ぎゅっと目を瞑って、身体に力を込める。

引きずるように腕を引っ張られ、知らない男の人に連れて行かれそうになる。
ジョンと私の力では、この人は止まらない。

どうしたらいいの…！！お願い…早く来て、ココ君…！

「おら乗れ…！」

車…！！嫌だ…！！

「…エンジンが…！！かからない…！？」

「っ！！」

男の視線が下に向いている間に正面からガラスを突き破って男の顔面に蹴りを入れた人。

「コ…ココ君…」

男を素早く拘束した彼はAに歩み寄る。

「よく耐えたな、偉いぞ。怪我はないか？取り敢えず無事か…」

ホッとしたココに飛びついた。

「ごめん…怖かったよな。」

「…っ！！」

怖くて怖くて仕方なかった。息苦しくて、声も出ない。

「ジョン、ありがとな。」

…俺は馬鹿か。族やってりゃ、こうなるのは当然だ。
彼女を危険に晒すなんて…！！

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