5 .笑み( 1/2 ) ページ7
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ほんのり肌寒くて、どこか心地よい風は、
この街に春が来ることを告げていた。
見たことのないものがたくさんあって、
その全てが不思議な光景だった。
『 きゃっ…!』
鳥たちが羽ばたいているだけで、
わたしは声をあげてしまう。
それでも彼は、わたしの手を離すことなく、
安心させてくれる。
『 ありがとう、ごめんね 』
赤「 構わないよ。初めてのことだろう ?」
はじめて、他人からもらった優しさ。
心臓がきゅっ、となって、
言葉にできない感情が押し寄せてくる。
『 もう一度、わたしの家に戻ってみる ?もしかしたらそこにいるかもしれないから 』
赤「 ああ、そうだね 」
もうだいぶ遠くなったわたしの家へ、
もう一度、わたしたちは歩いた。
戻りたいなんて、思ってない。
赤「 ゆきまる、どこにいるんだい ?」
『 わっ、!』
彼がゆきまる、と名前を呼んだ瞬間に、
わたしに飛びついてきた1頭の馬。
『 も、もしかして、ゆきまる ?』
赤「 ああ。やっぱり、ここにいたんだな 」
彼が頭を撫でると、
気持ちよさそうに目を細める白馬、ゆきまる。
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作者名:陽茉理 | 作成日時:2017年8月10日 16時