6.5 英智side ページ9
明日からAちゃんがプロデューサーとしてA組にくる。
解散したあと僕は保健室を出て教室に行こうとしていた。
「どうやら我輩とAを引き離せて少し気分が良さそうじゃのう？天祥院くん」
「朔間くん...」
夕日の逆光でその人の赤い目だけが光って見える。
三奇人...いや五奇人の1人、魔王・朔間零
「朔間くん、おじいちゃんになっちゃったってAちゃんに随分拒絶されてたね」
「今の間だけじゃよ。おぬしよりAの事は知っているからのう」
「...それは自慢かい？」
少しニヤッとした彼の顔に苛立ちを覚える。
彼はAちゃんの元恋人。
「自慢じゃないぞ？ただ...」
次の一言で僕の心はギュッと掴まれる
「Aが選んだのはお前じゃなく俺だからな。Aが俺と別れたのもお前が原因だよ」
冷たい赤い目。らしくない少し怒りを纏った表情。
その顔は大事な弟に僕が手を挙げた時...いや彼女を陥れた時の顔に似ていた。
「朔間くん、でもあなたはAちゃんの恋人であるより”アイドル”を選んだじゃないか。一概にも僕のせいとは言えないよね」
多分この時僕は勝ち誇った顔をしていたのだろう。
「Aに振り向いてもらうため必死かえ？」
「...当たり前だよ、Aちゃんは魔王に踊らされた偽の王だよ」
「...」
彼女がアイドル科に来た時のことを鮮明に覚えている。
『おいおまえ！！ここはアイドル科か！？おれの知ってるアイドルとかけ離れてるぞ！』
突然やって来て話しかけて少し高い”男の子”の声が耳に残っている
ぼーっとしていると朔間くんの声で現実に引き返された
「まぁ天祥院くんAにあまり嫌な事をするんじゃないぞ」
「？」
ボソッと切ない顔で呟かれた
「またAが傷つくのは嫌じゃからの」
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作者名：ルナ | 作成日時：2022年4月16日 6時
