あんスタ【もう1人の転校生】9 (ページ43)

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第120話ページ43

月永の言葉にあたしたちの動きが固まる。

月永｢ん？｣

月永は止まったあたし達を見て首をキョロキョロと動かす。

あたしは火を止めた。

貴｢そうだ、確かにミウラも犬を飼っていた｣

ﾐｳﾗ『可愛いでしょお？そっくりじゃん私に♪』

そうやって、1度だけ写真を見せてもらったんだ。

桜が立ち上がり、あたしの服の裾を噛んでグイグイと引っ張ってくる。

ついてこいという、ことか？

貴｢…｣

瀬名と月永も立ち上がる。

桜の誘導の元、あたしたちはある場所に来た。

貴｢ここは…｣

小さい頃から一緒にいた場所。

秘密基地のように、大切な場所。

緑が生い茂った大木のある大海原が見える丘。春は桜が咲き誇り蝶が舞い、夏は涼しく潮の香りを感じ、秋は銀杏と紅葉に包まれ、冬は雪解けの氷柱がオーロラのように木々の枝に吊れる。

何をするにも一緒で、何をするにもこの場所だった。

ミウラが見つけてくれた、あたしたちの宝物。

貴｢なんで桜が？｣

ふんふんと鼻を鳴らして地面の匂いを嗅ぐ。木の根元。桜は穴を掘り始めた。

そこから出てきた箱。土を払う。瀬名と月永がスマホのライトで手元を照らしてくれた、ありがたい。

貴｢これ、｣

箱の表面に書かれた、ordreの筆記体とチェスの駒ナイトの形。

開けた箱の中にあったのは、一通の手紙とナイトマークが表紙のノートが数冊。これは、ミウラが作詞していたノートだ。

捲るページに書かれている何度も修正された黒文字。この歌詞は知ってる。全部、あたしたちの曲だ。

でも最後のページは分からない。知らない曲だ。

瀬名｢手紙は？｣

開いてみる。

光が文字を照らす。

月永｢なんて書いてあったんだ？｣

貴｢…｣

言葉が詰まって、鼻がつんとなって目頭が熱くなる。

手紙を顔に押し付けて、力を込める。ぐしゃぐしゃになってしまうのに。

『身勝手でごめんね。でもね、Aのせいでも何でもないの。これがあたしの、意思だったの思いだったのよ』

『忘れないで』

『私はいつでも貴方と共にあるから』

『戦場で奏でる最終曲を君に』

曲名は、

貴｢I fight for you…｣

『貴方のために闘います』

最後の約束を果たすために。