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『えぇっと、そうです…？』
｢本物、だぁ…｣
はわわわ、と可愛らしく頬を染め、目の前の女の子は歓喜してくれているようだ。
そんな彼女とは違い、あたしは戸惑ってしまう。
まだ、あたしを知っていて声をかけてくれる人がいたんだ、と気づいたから。
｢私、Aちゃんがデビューした時から大好きで…！とくに1年の時に出演した夢ノ咲ハロウィンのアリスの衣装がが死ぬほど可愛くて似合ってて…！｣
『ほ、ほんとに初期の頃ね！？…寧ろ、凄いよ…』
グイグイ、と前のめりになるその子は更に頬を紅潮させて、早口で捲し立てた。
流石、初期グッズを鞄に付けてるだけあるわ…と感心してしまう。
こんなに熱烈なファンがいてくれたとは、つい笑みがこぼれてしまう。
｢あの、それで、その…｣
『ん？』
急に、ピタリと話をやめて彼女はまたモジモジとし出す。
己の親指と親指の腹を擦り合わせて、しばらく考えて、周りのほかの女の子たちからも、｢ほら、ファンなんでしょ？｣と背中を押され意を決したのか、あたしに再度向き直り、口を開く。
｢ずっとファンでした…！だから、あの、良ければ握手、…してもらえません、か、｣
最後になるにつれて小さくなる声、震え混じりの声、そんな彼女が、ファンとして｢愛おしい｣と思った。
あたしは『もちろん！』と笑顔で彼女の手を取った。
立ち話で冷たくなってしまった手は、少しだけ震えていて、ついでに『寒いね』と擦ってやる。
｢今日絶対手洗いません…｣
『うーん洗って！？』
薄らと涙を浮かべてあたしの手を握り返してくれる彼女の言葉に、思わずクスクスと笑ってしまう。
それに安堵してくれたのか、釣られたようにその子も笑ってくれて、気づいたら傍にいた月永くんと瀬名くんも、｢なんだそれ｣と笑った。
｢ほんとに夢見たい……ありがとうございました…、｣
『ふふ、どういたしまして？こちらこそ、ありがとう。』
あまり長居するのも立ち話するのも宜しくないので、お別れの言葉として『ありがとう』と告げた。
どこかでまた偶然すれ違うことはあったとしても、きっともう、アイドルとファンとして、ステージやイベントで会うことは無いのだろう…と少しだけ淋しく思えた。
じゃあね、とみんなで手を振り、あたしの家の方へ歩き出した時。
クイ、と袖を小さく袖を引かれる。
｢ずっと、待ってます｣
『…うん、ありがとう』
どこか不安気のある瞳が確かにあたしを映していた。
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なこ(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます~！そう言ってもらえて嬉しいですっ！これからも是非読んでやって下さい…！ (2023年3月6日 21時) (
レス) id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - ほんとにこの作品に出会えて良かったです！！設定からお話全てが最高です！！！陰ながら応援してます！！ (2023年3月4日 23時) (レス) @page34 id: 6a12c2dc89 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - お醤油さん» わー！コメントありがとうございます！個人的にはもう終わりまで決まってるので、スピード完結しそうですがこれからも、是非読んでいただけると…！頑張りますっ！ (2023年3月3日 23時) (レス) @page5 id: b90089acae (このIDを非表示/違反報告)
お醤油 - もう本当に面白いです！一気にスラスラ読んじゃいました！もう設定から好きすぎる…これからも作者様のペースで更新頑張ってください！応援してます！ (2023年3月3日 21時) (レス) id: b53313ac14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なこ | 作成日時：2023年2月27日 19時
